誰かの「型」に自分を合わせなくていい ライフオーガナイザーインタビューvol.12(佐伯新和さん/前編)

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おはようございます。
ライフオーガナイザーのさいとう きいです。

今日は、日本ライフオーガナイザー協会の設立メンバーである、佐伯 新和(さえき にいな)副理事にお話をお聞きします。

一級建築士として建築設計事務所を主宰する佐伯さんは、「根本的に家事が苦手! 片づけも苦手!」。マスターライフオーガナイザー/サーティファイド・ライフオーガナイザーの知識を活かして、できるだけラクして毎日を楽しく過ごせる家づくり、暮らしづくりを提案されています。

そんな佐伯さんが、日本に「ライフオーガナイザー」という職業を広めようと思ったきっかけは? アメリカの雑誌「THE NEW YORKER」でのインタビューでも引用された“ある言葉”との出会いについても伺いました。

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インタビュアー・記事/さいとう きい
プロフィール写真撮影/会田 麻実子
そのほかの写真提供/楽カジ.com通信

-日本ライフオーガナイザー協会設立前、日本ではほとんど知られていなかった職業「プロフェッショナル・オーガナイザー」について、どのように知りましたか?

大手ゼネコンのインテリアデザイン部門勤務を経て独立し、1995年に建築設計事務所を設立しました。けれども、結婚して子どもが生まれ、さらに寝たきり状態の義母の介護も重なるという大きな人生の転機を経験し、暮らしがぐちゃぐちゃに……。

建築士として「単に美しい家をつくること」に疑問を持ち、家事が苦手、片づけが苦手なわたしだからこそできる家づくりをしたいと考えるようになったんです。そんなとき、アメリカ在住の友人に「プロフェッショナル・オーガナイザー」という職業があると教えられました。

ライフオーガナイザーインタビューvol.12(佐伯新和さん/前編)
米国プロフェッショナル・オーガナイザー協会、「NAPO (The National Association of Professional Organizers)」のホームページ。

 

思考と空間の整理のプロである「プロフェッショナル・オーガナイザー」は、アメリカではすでに広く知られている職業でした。オーガナイザーたちが片づけに悩む人のカウンセリングを行い、ビフォー&アフターを紹介するテレビ番組「Mission: Organization」(HGTV)が人気だと聞いて、友人に録画して送ってもらったんですよ。3カ月分を一気に視聴し、日本の片づけとは違うアプローチに興味を持ちました。

-当時の日本の片づけについて、どう感じていましたか?

近藤典子さんや飯田久恵さん、松居一代さんといったカリスマの登場で、日本でも「片づけ」はビジネスになりつつありました。実はわたしも「暮らしがぐちゃぐちゃになっているのは、家事が苦手、片づけが苦手だからだ!」と、近藤典子さんの「暮らしアカデミー」で片づけや収納について学んだり、「整理収納アドバイザー」の資格をとったりしていました。

その頃、主流だったのは、家事や片づけが得意な「誰かのやり方」、つまり「型」を学ぶスタイル。「型」を理解することで暮らしは整ってきたものの、どうしてもうまくいかない部分があったり、片づいてもリバウンドしたり。カリスマたちは家事や片づけを「型」どおりに軽々とこなしているのに、わたしができないのは「ダラしないから!」「まだまだ努力が足りないから!」と自分を責めていました。

-「プロフェッショナル・オーガナイザー」は、どう違いましたか?

テレビ番組「Mission: Organization」では、最初にクライアントに十分なヒアリングを行い、正解とされる「型」ではなく「その人」に合わせた空間づくりに注力していました。そんなアプローチについて「もっと知りたい!」と思い、ビジネスパートナーとして一緒に活動していた高原真由美さん(代表理事)と、アメリカで行われた「NAPO(National Association of Professional Organizers)」のカンファレンスに参加したんです。

ライフオーガナイザーインタビューvol.12(佐伯新和さん/前編)
2009年のNAPOカンファレンスは4日間、フロリダのオーランドで行われました。

 

ライフオーガナイザーインタビューvol.12(佐伯新和さん/前編)
当時NAPO会長だったSTANDOLYNさんによる講演。

 

なにより驚いたのは、登壇するのが「片づけのプロ」だけではないところです。タイムキーパーが時間のオーガナイズについて語る、システムエンジニアが情報のオーガナイズについて語る。さらには脳科学者までもがレクチャーするんですよ! 「片づけ」が家事の延長ではなく、科学的、学問的に語られることに、心底驚きました。

ライフオーガナイザーインタビューvol.12(佐伯新和さん/前編)
「What Clients Really Want.」というテーマで話されたScott McKain氏と。右が佐伯副理事、左は高原理事。

 

同時に、「プロフェッショナル・オーガナイザー」のベーシック講座も受講しました。そこで知ったのがニーチェの言葉、「This is my way. What is your way? THE way does not exist.:これが私の流儀(やり方)です。あなたの流儀は? この世に唯一絶対の流儀はありません」。ひとつの「型」を押しつけない、オーガナイザーの原点がはっきりと理解できた言葉でした。この言葉は現在、日本ライフオーガナイザー協会の基本理念となっています。

-「プロフェッショナル・オーガナイザー」の知識を得て、仕事の仕方やご自身の暮らし方は変わりましたか?

大きく変わりました。ベーシック講座では、「右脳」「左脳」の違いについても学びます。ひらめき・直感を重視する右脳に対して、左脳では論理的・科学的思考を重視します。両方をバランスよく使う人もいますが、多くの人がどちらかに偏った使い方をするというのです。詳細について知れば知るほど、わたしは極端に「右脳」が強いことがわかってきました。

それまでのわたしは「誰かに頼る」ということができず、「苦手なことでも、がんばって上手にやらなくては!」と思い込んでいました。産後の辛さ、育児の辛さ、仕事の辛さなどを表に出すのは「恥」、誰かに頼るのは「負け」だと考えていたんです。けれどもオーガナイズを学び、人によって脳の使い方が違うと知ってから、「不得手なことは得意な人に頼ればいい」「無理しなくていい」と思えるようになったんです。

仕事では、左脳的な分野は得意な人に任せ、自分は右脳的な得意分野に集中することで、効率的に仕事を回せるようになりました。家庭では、家事や育児の辛さを夫に告白し、協力を求められるようになりました。その頃から、肩の力を抜いて、ラクに生きられるようになったと感じます。

世の中には、かつてのわたしと同じように「完璧主義の罠」にはまって、暮らしがにっちもさっちもいかなくなっている人が大勢いるのではないでしょうか。そんな人たちに、「誰かの『型』にはまらなくても、苦手なことができなくても、人生は終わりじゃない。This is my wayだと胸を張って言える生き方が必ず見つかる」ということを伝えたい。そんな思いが、日本ライフオーガナイザー協会の設立に関わることになった、わたしの原点だと思います。

(後編へ続く)

佐伯 新和(さえき にいな)
・一般社団法人日本ライフオーガナイザー協会副理事
・サーティファイド・ライフオーガナイザー認定講座担当講師、トレーナー

HP:ライフオーガナイザーとつくる家
ブログ:思考と空間の整理のプロ 楽カジ.com通信

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