生きづらさの原因を知る ライフオーガナイザーインタビューvol.12(佐伯新和さん/後編)

Share Button

おはようございます。
ライフオーガナイザーのさいとう きいです。

前回に引き続き、日本ライフオーガナイザー協会の設立メンバーである、佐伯 新和(さえき にいな)副理事にお話をお聞きします。

前編はこちら:
・誰かの「型」に自分を合わせなくていい ライフオーガナイザーインタビューvol.12(佐伯新和さん/前編)

一級建築士として建築設計事務所を主宰するだけでなく、マスターライフオーガナイザー/サーティファイド・ライフオーガナイザーとして数多くのセミナーやオーガナイズ作業もこなす佐伯さん。さぞかし「キリリとシャープな雰囲気の方」かと思いきや……、実際にお会いした佐伯さんは、どんな悩みや弱音でも、ど〜んと受け止めてくれそうな「肝っ玉」ライフオーガナイザーでした。

ライフオーガナイザーインタビューvol.12(佐伯新和さん/後編)

インタビュアー・記事/さいとう きい
プロフィールと書籍の写真撮影/会田 麻実子
そのほかの写真提供/楽カジ.com通信

— 佐伯さんは現在、「サーティファイド・ライフオーガナイザー」認定講座の担当講師でトレーナーですが、その資格について教えてください。

サーティファイド・ライフオーガナイザー(以下、CLO)とは、ADHD/ADD(注意欠陥多動性障がい/注意欠陥障がい)や発達障がいなどが原因で、「慢性的に片づけができず、日常生活に支障をきたしている状態」の方々をサポートするための専門的な知識や技術を持つライフオーガナイザーのことをいいます。

ライフオーガナイザーインタビューvol.12(佐伯新和さん/後編)

日本ライフオーガナイザー協会とアメリカの研究団体「ICD(Institute for Challenging Disorganization:慢性的に片づけられない状態に挑戦する研究機関)」が2011年に提携し、スタートしたプログラムです。

— CLOを日本に紹介しようと思った理由は?

わたし自身、「CD傾向(Chronic Disorganization:慢性的に片づけができず、日常生活に支障をきたしている状態)」があります。わたしの母も、もともとCD傾向があり、年齢とともにより深刻な状況に陥りました。

そのせいかもしれませんが、前回お話しした2009年5月のNAPOカンファレンスで「9月に『NSGCD(the National Study Group on the Chronically Disorganized:慢性的に片づけられない状態に関する研究会)』(現ICD)のカンファレンスがある」と聞いた瞬間、直感で「参加したい!」と思い、再び渡米したんです。

ライフオーガナイザーインタビューvol.12(佐伯新和さん/後編)
当時NSGCD会長だったKitさん(左)と佐伯副理事(右)。

カンファレンスでは、具体的な事例と、著名な研究者や脳科学者のレクチャーから、「行動を変えたり、脳のあり方を理解したりすることで、今の状況を大きく変えることができる」と学びました。話を聞いた瞬間、「これだ!」と確信したんです。わたしが知りたかったのは、家事の仕方でも片づけの仕方でも、美しい家づくりの手法でもない。生きづらさの原因となっていた「CD状態」について理解することだったんです。

ライフオーガナイザーインタビューvol.12(佐伯新和さん/後編)
著名な脳科学者、Daniel G. Amen氏にサインをもらう佐伯副理事。

CLO受講生には、自分自身や家族が慢性的に片づけられず日常生活に支障をきたしている状態(CD状態)を経験した(もしくは今もそうである)という方も、たくさんおられます。初めにお会いしたときの表情は悲壮感でいっぱいです。けれども、同じ悩みを持つ人が自分以外にもいるということを知り、CLOとしての知識を得ることで、少しずつ表情が柔らかくなり、行動が変わり、それを見た周りも触発される。そんな姿を、何度も見てきました。

彼らが必要としているのは、漠然とした根拠のないアドバイスや励ましではなく、理にかなった効果のある働きかけについて知ること。それによって今の状況を大きく変えることができるという事実なんです。CD状態の切羽詰まった暗黒時代から這い上がってきた者として、自分自身の経験と学びを受講生やクライアントと共有することが、わたしの使命だと思っています。

— 名古屋の「資源屋敷」での取り組みについて教えてください。

昨年、連日のようにメディアで取り上げられていた名古屋の「資源屋敷」について、わたしもテレビを見て知りました。CLOとして、住人のAさんやAさんのへの対応に苦慮されている行政のお役に立てるのではないかと考え、2015年6月から月1回のペースでボランティアとしてお邪魔し、片づけのお手伝いをさせていただいています。

ライフオーガナイザーインタビューvol.12(佐伯新和さん/後編)

大半のメディアは、この件について「悪を正すべき」という姿勢です。けれども、さまざまな事情で思うように体や頭が働かない人に社会通念を押しつけても、先へ進むことはできません。ライフオーガナイザーのアプローチは「本人にやりたいことがあれば、その人に合った方法を探す」というものです。

そこに、「ボディ・ダブリング(オーガナイザーがクライアントと同じ作業を淡々と行うことで、クライアントの意識が作業以外のことに向かうことを防ぎ、オーガナイズ作業を効果的に進めることができる手法)」などを交えながら、時間をかけて向き合っていきます。

ライフオーガナイザーインタビューvol.12(佐伯新和さん/後編)

これは名古屋だけの問題ではありません。世界的に見ても、いわゆる「ゴミ屋敷」は年々増加しています。アメリカやオランダでは、社会問題として行政が積極的に関わり、当人やソーシャルワーカー、オーガナイザーと協力しながら対応するケースが一般的です。日本でも、行政だけで対応するのは困難だと思います。ライフオーガナイザーだけで取り組めることにも限りがあります。日本の社会問題として、行政とライフオーガナイザーが連携しながら支援にあたることが不可欠だと考えています。

— 今後、どのような活動をしていきたいと考えていますか?

たくさんありますよ(笑)。

現在、CLOの講座はライフオーガナイザー1級の資格保有者だけを対象としているのですが、今後はCLOによる一般の方向けの基礎講座を行っていきたいと思っています。「ライフオーガナイザー2級、1級の資格を取得する余裕はないけれど、自分や家族がCD状態にあり、本当に困っている」という方が、今すぐ家庭で実践できることを持ち帰っていただきたいと思います。

それから、出版したい本が2冊あります。

1冊目が、「ユルらく系ライフオーガナイズ本」。CD状態に悩みながらも、ライフオーガナイズを学ぶことで、「まだまだ家は片づいていないけれど、家族で楽しく暮らせるようになった」「他人から見たら家は散らかっているけれど、自分なりのルールが整って暮らしが楽になった」という人は大勢います。必ずしも「ライフオーガナイズ=美しい家・美しい暮らし」ではないと伝えることで、勇気づけられる人がたくさんいるのではないでしょうか。

もう1冊が、名古屋の資源屋敷のほか、CDクライアントに対するCLOのアプローチをまとめた「実録本」です。特にアメリカなどでは、CDクライアントへのアプローチは「科学的かつ具体的な手法」として確立していますが、日本ではほとんど明文化されていません。実例とともに再現性のある手法が証明できれば、CDクライアントへの理解が深まるだけでなく、行政とライフオーガナイザーが連携した支援の実現にも繋がると考えています。

CDクライアントの数に対して、CLOの数はまだまだ不足しています。「問題があったら、CLOにご相談ください」と気軽に言える状況ではありません。けれども、「慢性的に片づけられない状態の人もいる」という知識を広めることで、少しずつでも社会が変わっていくと信じて、これからも活動を続けていきたいと思っています。

佐伯 新和(さえき にいな)
・一般社団法人日本ライフオーガナイザー協会副理事
・サーティファイド・ライフオーガナイザー認定講座担当講師、トレーナー

HP:ライフオーガナイザーとつくる家
ブログ:思考と空間の整理のプロ 楽カジ.com通信

Share Button