おはようございます。
ライフオーガナイザーのさいとう きいです。
2017年を目前に控え、片づけ収納ドットコムではたくさんのライフオーガナイザー達の「手帳の選び方・使い方」を紹介してきました。
今回お話をお聞きするのは、日本ライフオーガナイザー協会の本部講師、渡邊奈都子さんです。
講師養成やスキルアップに関する研修を全国で行なっている渡邊さん。2014年には、“心の中の片づけ“をサポートする「メンタルオーガナイズ」のプログラムを開発。最近は、メンタルオーガナイザーの育成と啓発にも注力しています。
渡邊さんの活動はそれだけにとどまりません。ご主人とともに立ち上げた会社で、心理カウンセラーとしてカウンセリング業務を行ったり、メンタルヘルス事業を展開したり。単に“忙しい”だけでなく、協会の本部講師としての役目、ご自身の会社の業務、カウンセラーとしての実務、関係者との打ち合わせ、さらには全国への出張など、仕事の内容が多岐にわたります。どのようにスケジュールを管理しているのでしょうか?
目次
■ スケジュール管理は「Googleカレンダー」と「Staccal」
実は渡邊さんは“手帳”を使っていません。スケジュールは、アナログではなくデジタルで管理しています。愛用しているのは、「Google」が提供する無料のウェブアプリケーション「Googleカレンダー」。スマートフォン上では、同じ情報を「Staccal」という有料アプリで管理しています。
ひとつのアカウント内に複数の「カレンダー」をつくる機能を備えている「Googleカレンダー」。自分の仕事は緑、ご主人の仕事は青、オフィスの予定はベージュなど、カレンダーごとに色を分けて管理しているそうです。スマートフォンの小さな画面でも、色を見るだけで何の予定が入っているかがひと目でわかります。
今でこそさまざまなスケジュールをデジタルで管理している渡邊さんですが、実は「もともとはアナログの手帳が大好き」だそう。
■ 財布より大事!?「手帳」でスケジュールを管理していた頃
渡邊さんが手帳を使い始めたのは、学生時代のこと。「放送研究会」の渉外部長として、1989年に開催された横浜博覧会をはじめ、多くのイベントに参加しました。そのころスケジュール管理に使っていたのがポケット付きの手帳です。イベントに関する打ち合わせ内容や決定事項などは手帳のメモページに書き込んで、担当者の名刺やイベント会場のマップなどはポケットに入れて管理していました。
まだ携帯電話もインターネットも一般には普及していなかった時代です(無線電話として肩かけ式のショルダーホンや、1キロ近い重さのハンディホンなどは登場していましたが…)。「いろんなものがはさまった分厚〜い手帳を落としたら、お財布を落とすより困る。そのくらい、当時のわたしにとっては愛着のある、重要なツールでした」という渡邊さん。その後、就職、結婚、カウンセラーとして開業してからもずっとアナログの手帳を使い続けていました。
それほどの手帳好きがデジタルへ移行する“きっかけ”はなんだったのでしょうか? 転機は2010年に訪れました。
■ アナログ vs. デジタル管理! 自分と相性がいいのは?
渡邊さんがライフオーガナイザーの資格を取ることにしたのは2009年末のこと。2010年は、協会が発行している「ライフオーガナイザープランナー」を使ってみるつもりでいたそうです。
ちょうどその頃、「Googleカレンダー」がベータ版から正式版としてリリースされました。「ライフオーガナイザープランナー」と併用してみたところ、これが思いのほか便利。スケジュールをデジタルで管理してみて、自分がいかにアナログの手帳に不向きな仕事をしているか痛感したといいます。
デジタルでスケジュールを管理するメリットは:
1) コピーがラク
2010年当時、渡邊さんはカウンセラーとして働く一方で、講師として学校で「メンタルヘルス」について教えていました。学校の授業は毎週、同じ曜日、同じ時間です。デジタルなら、同じ予定を毎週手帳に書き込まなくても「コピー&ペースト」や「繰り返し」といった機能で、ラクに管理できます。
2) 共有・同期できる
渡邊さんはご自身のオフィスで、心理カウンセリングを行っています。同じくカウンセラーであるご主人とスペースを共用しているため、予約が重ならないよう、以前はそれぞれのスケジュールをホワイトボードに書き込んで管理していました。けれども、「Googleカレンダー」に入れた予定をふたりの間で共有しておけば、手帳に書き込んだ予約をボードに書き写す手間は不要です。おまけに、どの場所から、どの端末から入力しても、同じアカウントの情報は同じ内容になるため、書き忘れや書き間違いといった、うっかりミスも防げます。
3) 検索できる
渡邊さんは断続的に同じクライアントさんをカウンセリングすることがあります。手帳で予約を管理していたときは、前回カウンセリングしたのがいつだったか、自分の記憶を頼りに、ページを一枚一枚めくって確認していたそうです。デジタルデータであれば「検索」機能を使って、前回だけでなく、その前の予約まで瞬時に遡って確認することができます。
4) 入力がラク
2008年に「iPhone3G」が登場して以来、iPhoneを愛用しているという渡邊さん。「iOS8.1」以降は特に音声入力の精度がよくなっているため、ほとんどの入力を“声”で行っているそうです。「iPhoneをトランシーバーのように持って音声入力していると怪しい人に見えるのが気になっていたんです。でも、電話しているように持てば怪しくないという話を聞いて以来、通話しているふりをしながら入力してます(笑)」
5) リマインドしてくれる
「Googleカレンダー」には、入力した予定を必要なタイミングで知らせてくれる通知機能があります。「たとえば、今日の15:00にカウンセリングの予約が入っているとしたら、1時間前にスマフォのポップアップでお知らせが入るようにしています。来週中に支払わなくてはいけない振込がある場合は、デッドラインの前日のお昼にメールで通知がくるように設定します。自分の頭のハードメモリにだんだん自信がなくなってきたので(笑)とても助かっています」
渡邊さんにとっては、スケジュールを手帳やホワイトボードといったアナログな仕組みで管理するよりも、デジタルで管理する方がずっとスムーズだったようですね。
■ 手帳を使うことではなく、自分の時間を管理することが目的
なんの問題もなくデジタル管理に移行できたように見える渡邊さんですが、実はここに到るまでの数年間、紆余曲折があったといいます。
下の写真は、渡邊さんがスケジュールを「Googleカレンダー」で一元管理すると決めた2015年の“4月始まりの手帳”です。かろうじて4月のマンスリーページに予定が書き込まれているものの、5月以降はまっ白でした。
「手帳が好き」という気持ちが強かったため、2010年に「Googleカレンダー」を使い始めてからも、毎年手帳を買っていたという渡邊さん。デジタル管理で事足りているのに紙の手帳を併用するということは、どこかのタイミングで“手帳に予定を書き写す時間”が必要になります。限られた時間をオーガナイズしていくと、優先順位の低い書き写しの時間が維持できないのは当然のことだったのかもしれません。
「2014年の終わり頃、『もうやめよう!』と思って、手帳を買いませんでした。でも、年が開けると『やっぱり、手帳がないと先々のことが俯瞰できないし…』とモヤモヤしはじめ、2015年4月始まりの手帳を買ったんです。これが続かなかったら手帳はやめる。そう決めていました。結局続かなかったんですが、おかげで“ふんぎり”がつきました(笑)。デジタル一本にしぼったことで、時間の管理がシンプルに、ラクになりましたよ」
いつでもスマートに時間を管理しているイメージのある渡邊さんに、そんなモヤモヤ時代があったとは驚きです。最後に、「手帳の選び方・使い方」で迷っている方へ向けてアドバイスをいただきました。
「まずはなにかツールをひとつに決めて、スケジュールを一元管理してみるといいと思います。わたし達が手帳を使いはじめた頃と今とでは、環境もテクノロジーも大きく変わっているので、以前のわたしのように“手帳を持つべき”という思い込みは手放してもいいのかもしれません。自分に合った方法で時間を管理することが目的であって、手帳を使うことが目的ではないということを、忘れないようにしたいですね」
2016年の手帳も、残すところわずかになりました。みなさんは、2017年も同じ手帳を使いますか? それとも、新しい仕組みづくりに挑戦しますか? 時間をオーガナイズして生み出された時間で何をしますか? 何をしたいですか?
片づけ収納ドットコムでご紹介するアイデアが、心地いい暮らしづくりに役立てれば嬉しいです。
渡邊奈都子
・日本ライフオーガナイザー協会本部スタッフ(講師育成担当)
・マスターライフオーガナイザー
・メンタルオーガナイザー認定トレーナー
ブログ:メンタルオーガナイザー渡辺奈都子のブログ「SmartBeing」
インタビュアー・記事/さいとう きい
写真/会田 麻実子