在宅時間が長くなって、気になりはじめた「もさっと」した家の状態〜ライフオーガナイザーインタビュー(原田ひろみさん/前編)

片づけのプロとして活躍するライフオーガナイザー達は、どんなきっかけで「片づけ」に目覚め、資格を取得し、今に至っているのでしょうか?

兵庫県在住のライフオーガナイザーで、片づけ収納ドットコムのライターでもある原田 ひろみさんにお話を伺いました。

インタビュアー/さいとう きい、会田麻実子
写真提供/原田 ひろみ
記事・編集/さいとう きい

 

編集チーム・さいとうきい(以下、編集・さいとう) 原田さんは、どのようにしてライフオーガナイザーの存在を知りましたか?

原田 ひろみさん(以下、敬称略) 出産を機に勤めていた会社を辞め、家にいる時間が増えたんです。すると、それまで気にならなかった、もさっとした家の状態が気になり始めました。それで収納や片づけに関する個人の方のブログを見ていたら、「ライフオーガナイザー」や「整理収納アドバイザー」といった職業があることを知ったんです。

編集チーム・会田麻実子(以下、編集・会田) 「もさっと」した状態って、今の原田さんからは想像できないです(笑)

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原田 「もさっと」してました(笑)。子どもが生まれるまでは、一戸建ての4LDKに夫婦二人暮らしだったので、いくらでもものが置けました。あまり深く考えずにものを家に入れていたら、気づいたときには「もさっと」した状態になっていたんです。

フルタイムで仕事をしていた頃は、出社時間が早く、帰宅時間も遅くて、自宅にはほとんど寝に帰ってくるくらい。テニスが趣味で、土日は外に出ることも多かったんです。家の状態が気になることはあっても、家の外に楽しいことがたくさんあったので、家の中のことは後回しでした。

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編集・さいとう 本格的に家を片づけはじめたのは、いつ頃ですか?

原田 子どもが生まれてすぐ、2009年頃です。友だちが家に遊びにくることが増え、そのたびに片づけるのが大変になって、「本気でなんとかしたい!」と思いました。その頃から、収納の本やブログをたくさん読むようになったんです。

編集・会田 そのときに、「片づけのプロ」の存在を知ったんですね。

原田 はい。でも、当時はまだ「プロに学ぼう」「資格を取ろう」とは思わなくて、ひとりで片づけていました。もやもやする「見た目」を整えたいという思いが強くて、理想の「ビジュアル」から片づけに関する情報を探していたんです。好みのモノトーン系インテリアブログをすみからすみまで読んで、マネたりしていました。

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編集・さいとう 片づけはうまく進みましたか?

原田 一時的に見た目は整いました。でも、暮らしやすいかと言われると、そうでもなくて……。「もの」中心、「見た目」重視の収納だから、ものの出し入れが大変で、片づけにも掃除にも、料理にも時間がかかるんですよ。とくに子どもが離乳食の頃は、一日中ずっとキッチンに立っているように感じていました。あの頃は、とにかく自分の時間がほしかったです。

編集・会田 その後、どのようなきっかけで片づけを学ぼうと決めたのですか?

原田 いくらがんばって片づけてもすっきりしないし、暮らしやすくならない。そんな負のループに陥っていたとき、「ライフオーガナイズ」の本を読んだんです。本には「時間を整理する」という考え方が書かれていました。ものの片づけだけでなく、時間にも追われていた私は、その考え方にすごく惹かれて、「ライフオーガナイザー入門講座」を受講してみることにしたんです。子どもが2〜3歳の頃でした。

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編集・さいとう ライフオーガナイズを学んだことで、片づけに対する考え方は変わりましたか?

原田 大きく変わりました。

ライフオーガナイズでは「捨てる」から始めない片づけが推奨されています。捨てるものを選ぶのではなく、自分に必要なものを選ぶという考え方です。これを聞いたとき、本当に目からウロコが落ちる思いでした。

以前の私は「もう使わない」とわかっているものでも、「もったいない」と感じて捨てられないことがよくありました。でも、自分の気持ちで「もったいない」と思っているというより、世間の常識と照らし合わせて「もったいない」「捨てられない」と判断していたんです。

自分軸で考え、自分に必要なものを選ぶことができていなかったから、いくら片づけてもすっきりしないし、不要なものの管理に追われて忙しいのだということに気づきました。

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編集・会田 自分軸での片づけは、すぐに身に付きましたか?

原田 いいえ、時間がかかりました。それまで「自分軸で考える」という習慣がなく、周りに振り回されてきたので、頭では理解できてもすぐに実践できなかったんです。

でも、自分の価値観に照らし合わせて、本当に必要なものを選び取り、不要なものを取り除く「整理」を少しずつ進めるうちに、気持ちが満たされていくことに気づいたんです。ものを手放すと「もったいない」という喪失感を味わうものだと思っていたのに、大切なものだけが家にあるという充足感が得られたのには、とても驚きました。

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編集・さいとう ご自宅の片づけは、具体的にどのように進めましたか?

原田 わが家は2階建てで、生活の中心はキッチン、リビング、子ども部屋のある1階です。そこで、まずは1階を快適にすることを片づけの目標にしました。それぞれの場所で必要なものを選びとり、不要なものを2階に移動しました。1階に必要なものだけが揃ってくると、とても快適に過ごせるようになったんです。

2階に移動したものは、しばらくそのままにしていました。心理的にすぐ手放すのがむずかしくて。でも、2階は主に寝るだけだから、そんなにものは必要ないと気づいてから、少しずつ手放せるようになりました。

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編集・会田 片づけの効果を感じましたか?

原田 はい、キッチンから効果を感じました。それまでは、1日中キッチンに立っているように感じていたのが、「●時までには終わる」と先が見えるようになったんです。予定通り料理や後片づけが終わってソファで寛いでいると、大げさでなく本当に「幸せ」だと感じられるようになりました。

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原田 以前は料理を作っても置く場所がなくて、いつもイライラしていました。このキッチンの見直しで、暮らしやすさが激変したと思います。

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編集・会田 ご家族との関係に変化はありましたか?

原田 ライフオーガナイズを学び、人はそれぞれ「利き脳※」によって得意なこと、不得意なことがあると知って、家族を客観的に見られるようになりました。

※手に利き手があるように、脳にも利き脳があるという、京都大学名誉教授、坂野登教授の提唱する考え方。

これまで、家事や片づけの主導権を私が握らなければいけないと考えていました。完璧主義なところがあって、なんでも「ちゃんとやろう」「素敵にしよう」と、ひとりでがんばっていたんです。

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でも、よく考えたら夫は私より片づけが得意。自分で身の回りを整えられます。子どもはルーティンワークが得意で、口うるさく言わなくて毎日お手伝いをしてくれます。私ひとりががんばらなくても暮らしは回るんだと知って、肩の力が抜けましたね(笑)。家族仲もよりよくなったと思います。

後編につづく:
>>>もの選びの基準は「他人にどう見られるか」より「自分が心地いいかどうか」〜ライフオーガナイザーインタビュー(原田ひろみさん/後編)

ライフオーガナイザー 原田 ひろみ
ブログ:「洋服・暮らし・時間」大切なものを自分で選び取る整理術

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