もの選びの基準は「他人にどう見られるか」より「自分が心地いいかどうか」〜ライフオーガナイザーインタビュー(原田ひろみさん/後編)


前回に引き続き、兵庫県在住のライフオーガナイザーで、片づけ収納ドットコムのライターでもある原田 ひろみさんにお話を伺います。

前編はこちら:
>>>在宅時間が長くなって、気になりはじめた「もさっと」した家の状態〜ライフオーガナイザーインタビュー(原田ひろみさん/前編)

インタビュアー/さいとう きい、会田麻実子
写真提供/原田 ひろみ
記事・編集/さいとう きい

 

編集チーム・さいとうきい(以下、編集・さいとう) ライフオーガナイザー2級認定講座を受けたあと、すぐに1級を取得しましたか?

原田 ひろみさん(以下、敬称略) 1年半くらい開きました。当時は、あくまでも自分の片づけの悩みを解決するための学びだったので、2級認定講座を受けたら満足してしまって。

その後、父が亡くなって、母が実家でひとり暮らしをすることになったんです。母が少しでも快適に過ごせるよう、片づけを手伝ってあげられないかと考えて、1級を取得することに決めました。

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編集チーム・会田麻実子(以下、編集・会田) ライフオーガナイズをより深く学んで、いかがでしたか。

原田 学べば学ぶほど、自分の親といえども自分自身とは価値観が違うと意識するようになりました。価値観が違えば、暮らしやすさの基準も違います。

実家の母は、家族で暮らしていた頃に使っていたものをそのまま持ち続けているので、ひとり暮らしにしてはものが多いほうです。それを見ると、「片づけたら暮らしやすくなるのに」と思うことはあります。でも、それはあくまでも私の価値観なんですね。

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クローゼットの吊り下げラックに原田さんはトップスを(左)、ご主人はキャップを収納(右)。それぞれの使いやすさに合わせてカスタマイズ

編集・さいとう 実家の片づけってむずかしいですよね……。原田さんは、どのように進めていますか。

原田 ものが多いといっても、今の実家の状態は母が不便を感じていなければ片づける必要はないレベルです。なので、こちらから片づけを催促しないようにしました。母には「やる気になったらいつでも手伝うよ」と伝え、本人のリクエストに答えるかたちで、帰省するたびに少しずつ片づけを進めています。

ものを手放すことに抵抗がある「もったいない世代」なので、判断を急かさず、たまには思い出も語りながら…(笑)。早く終わらせてしまうことよりも、ゆっくりものと向き合いながら楽しく進めることを心がけています。

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原田さんの現在のクローゼット

編集・会田 原田さんはクローゼットオーガナイザーの資格も取得されていますよね。

原田 はい。ライフオーガナイズを学んで家の片づけは進んだのですが、クローゼットの整理はなかなか進みませんでした。それで、服の片づけに特化したクローゼットオーガナイズに興味を持ったんです。

編集・会田 クローゼットオーガナイズの手法を学び、服の片づけは進みましたか?

原田 はい。2畳のウォークインクローゼットに300着くらい入っていた衣類が、半分に減りました。今は150センチ幅のクローゼットに収まるほどです。

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300着の洋服を持っていた当時の様子

編集・さいとう すごい変化ですね。どのようにして減らしたのですか。

原田 クローゼットの中の衣類ひとつひとつと向き合い、ひたすら「自分が着たいもの」を選び続けました。

それまでは、いろんな雑誌に影響されて買った服をたくさん持っていたんです。「他人にどう見られるか」という他人軸で服を選んでいたから、スタイルがバラバラで。コーディネートはむずかしいし、無理して着たって、ぜんぜん心地よくありませんでした。

それが、「自分が着ていて心地いい」という自分軸で服を選ぶようにしたら、自然体で心地よくいられることに気づいたんです。選び続けるうちに、手元に残した服のスタイルも揃ってきて、コーディネートしやすくなりました。自分がいいと思った服をアレンジして着ていると褒められることが増えて、自信にも繋がりました。

編集・会田 そういえば原田さんは以前、「クローゼットの服を一旦すべて出して、着た服だけを戻していく」という実験をしていましたよね。

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1か月後のクローゼット

原田 そうですね(笑)。昨年の6月から8月までやってみて、3カ月後にクローゼットにある服を数えたら、全部で35着でした。たくさん持っていても、実際に着ているのはそのくらいだとわかって驚きました。

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3カ月後のクローゼット

クローゼットの中に本当に好きな、着る服だけが入っていると、服選びで悩みません。「あの服も着なきゃ、この服も着なきゃ」という心理的な負担もなくなるから、たくさん抱えるより断然ラク。この先、まだもう少し手放せそうです(笑)

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編集・さいとう 今はライフオーガナイザーとして、お母様以外の方にも片づけを教えていますよね。どのような気持ちの変化がありましたか?

原田 1級を取得した後、母以外の人に片づけを教えようと考えられるようになったのは、その何年も後のことでした。自分を活かしながら自分らしく生きるには、あれもこれも自分でやりたい、完璧にこなしたいという気持ちを整理し、手放さなくてはいけませんでした。

完璧主義だった私が「家のことはなんでも一人で背負わなくはいけない」という思い込みを手放し、ライフオーガナイザーとして働くことを選べたのは、ライフオーガナイズの学びを通して「整理」のスキルを身につけたからです。「整理」というのは、大切なものを選び「不要なものを手放すこと」なんですね。

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編集・会田 今はライフオーガナイザーとして、どのような活動をされていますか?

原田 ラクに楽しく過ごしたいと願う忙しい女性が、片づけを「学べる」「頼れる」「楽しめる」サポーターとして活動しています。

たとえば、「学べる」では、セミナーやウェブメディアで情報を発信することで、ご自身で片づけられるように。「頼れる」では、片づけが苦手な方のご自宅に伺って実際にサポートしています。最後の「楽しめる」で、日々のファッションを楽しむ心のゆとりを持てるようになるまで、一連のサービスとして提供したいと考えています。

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編集・さいとう クローゼットオーガナイザーとしても活動されていますね。

原田 お客様ご自身のクローゼットだけでなく、ファミリークローゼットを整えるサポートも行っています。

私もかつてそうだったのですが、クローゼットに服は大量にあるんだけど、何をどう着たらいいかわからないという人が多いんですね。とくにスカーフやストールは「持っているけど使いこなせない」という声をよく聞きます。日本スカーフコーディネーター協会の「ストールコーディネーター(ベーシック)」「スカーフコーディネーター(ベーシック)」の講座を受講して巻き方や色の合わせ方などを体系的に学んだので、最近はストールやスカーフを活用したコーディネートの提案も行っています。

企業向けのセミナーも開催していて、昨年は高島屋でクローゼットの整理収納法講座を開催しました。

新しくものを増やしておしゃれになるというよりは、今持っているものを使いこなして、おしゃれを楽しめるようになっていただきたいと思っています。

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編集・会田 ビジネスだけでなくプライベートでも、これから挑戦してみたいことはありますか?

原田 住まいやクローゼットが片づき、選び取る力が身に付いて、時間と気持ちの余裕がうまれました。それでライフオーガナイザーとしての仕事をはじめたのですが、最近は「仕事を軌道にのせたい」「実績を積み上げたい」という完璧主義な一面が顔を出して、無理してがんばりすぎたかなと思っています。そのせいで、逆に仕事に対する視野を狭めてしまったところもあるかもしれません。

45歳になって、「やりたいこと」「やらなきゃいけないこと」「なしとげたいこと」のバランスをとりながら、自分の「楽しみ」も大切にしたいと考えるようになりました。

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編集・会田 最近の楽しみはどんなことですか?

原田 結婚する前からの趣味だった「テニス」を再開したんです。そうしたら、コートに立っている時間がなにより楽しくて(笑)。これからは、自分を満たしてあげる時間をもっと増やしたい。そうすることで、より広い視野で仕事のことも家のことも、もちろん自分自身のことも見られるようになるんじゃないかと感じています。

編集・さいとう、会田 この記事の1枚目にある原田さんの写真の意味が、今わかりました(笑)

編集・さいとう 最後に、片づけ・収納に悩んでいる方へのメッセージをお願いします。

原田 どなたでも、「きっと変われる」とお伝えしたいです。誰にでも必ず、自分に合う片づけの方法があります。合う方法が見つかれば、いつかきっと片づけられるようになる。いい方法が見つからなければ、合う方法を一緒に探しましょう。

自分を大切にしながら自分に向き合うことで、暮らしはきっとラクになります。時間がかかっても、あきらめなければいつか必ず変われると、私は思っています。

ライフオーガナイザー 原田 ひろみ
ブログ:「洋服・暮らし・時間」大切なものを自分で選び取る整理術