「好きなこと」を選べないのは、自分を後回しにするクセが原因〜ライフオーガナイザーインタビュー(秋山陽子さん/前編)

片づけのプロとして活躍するライフオーガナイザー達は、どんなきっかけで「片づけ」に目覚め、資格を取得し、今に至っているのでしょうか?

広島県在住のライフオーガナイザーで、片づけ収納ドットコムのエディターでもある秋山陽子さんにお話を伺いました。

インタビュアー/さいとう きい、会田麻実子
写真提供/秋山陽子
記事・編集/さいとう きい

 

編集チーム・さいとうきい(以下、編集・さいとう) 2019年、もっとも輝いていたライフオーガナイザーに贈られる「シャイニング☆スター賞」を受賞されましたね。おめでとうございます!

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秋山陽子さん(以下、敬称略) ありがとうございます。大勢の方からいただいた「おめでとう!」という言葉もうれしかったのですが、地方で活動していて著書の出版もしていないわたしが受賞したことに「希望が持てました!」と言ってもらえたことが、とてもうれしかったです。

でも、壇上では固まってしまって、うまく話せませんでした……(笑)。ライフオーガナイザー仲間の前では、なんだか緊張して取り繕ってしまうんですよ。

編集チーム・会田麻実子(以下、編集・会田)「シャイニング☆スター賞」は、協会員の投票で決まる賞です。選ばれた理由として、「地道でコツコツ一歩ずつ進む姿」「定評ある現場力」「飾らない人柄」「誠実さ」などがあがっていました。仲間内にもファンの多い秋山さんが、なぜライフオーガナイザーの前だと緊張するんでしょう?

秋山 わたしがライフオーガナイザーになったばかりの頃って、気持ちがとても落ち込んでいた時期と重なるんです。その頃を知っている人たちにとって、わたしは「大人しくて元気のない人」というイメージだと思います。でもそれは、本来のわたしの姿ではなくて……。

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秋山邸のリビング・ダイニング

編集・さいとう 元気がなかった理由というのは、「ライフオーガナイズ」を学んでみようと思ったきっかけにも繋がることですか?

秋山 その通りです。10年前、単身赴任していた夫が突然、病気で亡くなりました。赴任先から送り返されてきた荷物の山を前にして、「これからどうすればいいのか」と茫然としました。

当時、2人の子どもはまだ小さくて、わたしは専業主婦だったんです。食べていくためにも、まずは働かないといけない。それで、前に勤めていた銀行の元上司に紹介してもらい、自宅で保険関連の事務の仕事をはじめました。でも、プライベートでは誰とも話したくないから、近所の人に会わないよう、隣町のスーパーまで買い物に行っていました。

それから1年くらいたった頃、引きこもっているわたしを心配した母が、「東京で友人が掃除の講座をやるから、行ってきなさい」と送り出してくれたんです。講座を受けたら、掃除がしたくなって(笑)。長い間、閉じていたカーテンを開けて掃除をしてみたら、心が動き出しました。気持ちが少し軽くなったんです。

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編集・会田 気持ちと空間って、つながっている部分があるのかもしれませんね。

秋山 そうだと思います。講座を受けて気持ちが少し前向きになり、その頃から住まいに関する個人のブログを見るようになったんです。そこで片づけの資格があることを知り、いくつか講座を受けてみました。でも、収納のテクニックを学ぶだけでは、なんとなく“しっくり”こなくて……。

そんなとき、ライフオーガナイザーの入門講座を受けて驚きました。「あれ? 片づけの講座なのに、あまり『収納』の話をしないな」って(笑)。そのかわり、講座では「人」「暮らし」というキーワードが多く使われていました。一緒に受講した友人と「自分の時間や生活を組み立てるのに役立つ片づけだよね」という話をしたのを、今でもよく覚えています。とても興味を持って、すぐに2級、1級を取得しました。

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編集・さいとう 1級を取得してすぐに片づけのプロとしての活動を始めたのですか?

秋山 1級を取得してからしばらくの間は、保険関連の事務の仕事と並行して活動していました。

ライフオーガナイザーとしての仕事を始めた理由は、「わたしと同じように、シングルマザーとしてがんばっている人たちの力に少しでもなれたら」という想いからです。始めてみてすぐに、わたしが生きがいを感じる“ライフワーク”だと気づきました。

その一方で、保険の仕事は、銀行勤務の経験があったから“できること”ではあっても、“好きなこと”ではありませんでした。でも、自分の気持ちがどうこういう前に、食べていくための“ライスワーク”だから続けるべき。そう思い込んでいたんです。

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秋山邸の玄関

編集・さいとう 今はライフオーガナイザーとして、幅広く活躍されていますね。

秋山 兼業をやめてライフオーガナイザーの仕事、一本でいこうと考えるようになったのは、それから3年ほど後の「メンタルオーガナイザー」の資格取得がきっかけだったように思います。

編集・会田 メンタルオーガナイザーのプログラムは、「願望、感情、認知の3つの観点から、思考(頭)と精神(心)のオーガナイズができる個人を育成し、また他者の心の整え方を支援できるスキルを身につけること」が目的とされていますね。メンタルオーガナイズを学んで、秋山さんはどのように変わりましたか?

秋山 頭で考える「すべきこと」ばかりを優先して、心で感じる「したいこと」や「好きなこと」を置き去りにしていたことに気づきました。

わたしに元気がなく楽しそうじゃないと、子どもも母も心配します。でも、わたしが元気で楽しそうだと、それぞれ安心して好きなことができるんです。だから、まずはわたしが楽しむことが大切。もっと自分の「したいこと」や「好きなこと」を選んでいいんだと考えられるようになりました。メンタルオーガナイズの学びを通して、「心が変わった」と感じます。

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編集・さいとう ライフオーガナイザーとしての働き方にも変化があったんですね?

秋山 はい。メンタルオーガナイズのメソッドをコンサルティングに取り入れるようになりました。

ヒアリングの際、お客様にとっての理想の暮らしを明らかにするため、「好きなものはなんですか?」「大事にしたいことはなんですか?」といった問いかけをします。でも、質問に答えられないお客様が多くいらっしゃるんですよ。まさしく過去のわたしと同じ。自分以外のことを優先するあまり、自分自身の「好き」や「大事」を後回しにするクセがついていて、突然たずねられても出てこないんです。

そういうお客様には、「ものの片づけ」の前に「心の片づけ」が大切だとお話しています。メンタルオーガナイズの手法を使ってヒアリングすることで、お客様が“変わる”スピードがあきらかに早くなりました。その頃からお仕事のご依頼も少しずつ増えて、“ライフワーク”であるライフオーガナイザーの仕事を続けていく自信につながったように思います。

後編につづく:
>>>片づけも感情も、混ぜるなキケン!分けることでうまくいく〜ライフオーガナイザーインタビュー(秋山陽子さん/後編)

ライフオーガナイザー 秋山陽子
ブログ:うちらしく暮らしやすく シンプルing

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