コロナ禍で変わった家づくりのトレンドとは?片づけのプロが家づくりのプロに聞いてみた【時間を生み出すヒト・モノ・コト】

こんばんは。
ライフオーガナイザーのさいとう きいです。

コロナ禍を受けて働き方や学び方が変わり、それにともなって家での過ごし方が変わった人も多いのではないでしょうか。間取りや収納スペースに不満を抱くだけでなく、自宅での居心地の悪さが気になる場面も増えているように思います。

今回の連載、「時間を生み出すヒト・モノ・コト」では、総合住宅設備・建材メーカー「パナソニック ハウジングソリューションズ株式会社」、建築システム事業部のみなさんに、コロナ禍で変わった家づくりのトレンドについてお話を伺いました。

片づけのプロが家づくりのプロに聞いてみた!コロナ禍で変わった家づくりのトレンドとは?【時間を生み出すヒト・モノ・コト】

インタビュー・記事/さいとう きい
写真撮影・加工/会田 麻実子
ショールーム見学・撮影/手塚千聡、木村道子

■ 1万人アンケートで判明!コロナ禍の家づくり

片づけ収納ドットコム・さいとうきい(以下、さいとう):
「ワークスペースを確保したい」「子どものオンライン学習環境を整えたい」「衛生用品の置き場所をつくりたい」など……。わたし達、ライフオーガナイザーも、片づけに悩むお客様の“視点“がコロナ禍以降、変わってきていると感じます。

家づくりのプロであるみなさんは、一般のお客様のニーズがコロナ禍で変化したと感じることはありますか?

商品販売企画課 野村秀樹さん(以下、野村さん):
ありますね。実は昨年秋、パナソニックのオーダーメイド収納「キュビオス(CUBIOS)」を18年ぶりにリニューアルしたんです。

開発にあたり、全国の30〜70代のエンドユーザーさん、11,491名を対象としたインターネット調査を実施しました。その結果がこちらです。

片づけのプロが家づくりのプロに聞いてみた!コロナ禍で変わった家づくりのトレンドとは?【時間を生み出すヒト・モノ・コト】

野村さん:
約半数の方が「在宅時間が増えた」と回答しています。ウィズコロナ時代の「ニューノーマル」なライフスタイルでは、「家での仕事がはかどる快適なスペースがほしい」「家事や片づけを効率よく行いたい」「家の中で心地よい居場所をつくりたい」といったニーズが高まっています。

片づけのプロが家づくりのプロに聞いてみた!コロナ禍で変わった家づくりのトレンドとは?【時間を生み出すヒト・モノ・コト】
出典:「キュビオス」新商品発表資料(画像提供/パナソニック ハウジングソリューションズ)。クリックで拡大します。

野村さん:
こうしたニーズを汲み取るスピードが早いマンションのリノベーション物件では、在宅ワークスペースや大型の収納スペースがしっかり入ってきたという印象があります。

さいとう:
ウイルスを室内に持ち込まないよう配慮されたプランも多くなっていますね。

野村さん:
はい。玄関から洗面所に直行できるプランや、玄関近くにクローゼットが設けられたプランなども、最近よく見かけるようになりました。これから発売される新築物件にも、こういったトレンドは広く普及していくと思います。

■ ニーズ1: 仕事に集中できる環境を整えたい!

さいとう:
まずは1つめのニーズ、「家での仕事がはかどる快適なスペースがほしい」について教えてください。

コロナ禍以降、わが家も夫婦で在宅ワークすることが増えました。一時期はそこに子どものオンライン授業が重なったりして……。2LDKの狭いマンション住まいで、もうてんやわんやでした。

DX・新規事業推進部 石原義之さん(以下、石原さん):
さいとうさんのお宅のように共働きでダブル在宅ワークの場合、自宅に書斎があったとしても、夫婦のどちらかがダイニングテーブルで仕事をされることが多いようです。そういった方からは、「食事のときに片づかないから困る」というお話をよく聞きます。

片づけのプロが家づくりのプロに聞いてみた!コロナ禍で変わった家づくりのトレンドとは?【時間を生み出すヒト・モノ・コト】

石原さん:
けれども、一般的なご家庭で夫婦ふたり分の書斎をつくるのはむずかしいですよね。だから、リビングの一角にワークスペースを設けたいという方が増えていて、「仕切りたいニーズ」が高まっていると感じます。スペースを完全に仕切るのではなく、「室内窓」「しきり窓」や、間仕切り収納家具などでゆるく仕切るスタイルが好まれているようです。

さいとう:
片づけ収納ドットコム編集メンバーの手塚さんと木村さんが、「パナソニック ショウルーム 大阪」を訪問した際、印象に残ったというスペースの写真を見せてもらいました。「ゆるく仕切る」とは、画像左手のガラスドアや右手の収納棚の横にワークスペースをつくるといったイメージですか?

片づけのプロが家づくりのプロに聞いてみた!コロナ禍で変わった家づくりのトレンドとは?【時間を生み出すヒト・モノ・コト】
(ショールーム撮影/手塚千聡)

石原さん:
そのとおりです。ガラス窓付きの壁や引戸、収納棚で仕切ることで、リビングから完全に孤立しないけれど、ある程度独立した空間が生まれます。ウォークインクローゼットや納戸の一角にデスクスペースを設けるという方法もありますよ。

さいとう:
とてもいいアイデアですね。石原さんがショールームでご紹介くださったワークスペースの写真を見て、システム収納を組み合わせることで、こういった空間もつくれるんだと感心しました。

片づけのプロが家づくりのプロに聞いてみた!コロナ禍で変わった家づくりのトレンドとは?【時間を生み出すヒト・モノ・コト】
(ショールーム撮影/手塚千聡)

さいとう:
ところで、みなさんの職場でも在宅勤務はありましたか?

収納商品企画開発課 真名子健二さん(以下、真名子さん):
はい。今でも出社率30パーセントが目標になっています。

さいとう:
自宅でのお仕事、大変ではありませんか?

真名子さん:
……大変です(笑)。うちは現在、子どもが中学1年生と小学4年生なんですが、新型コロナウイルスの感染が広がり始めた当初は小学5年生と2年生。学校が急にオンライン授業に切り替わることもあったため、妻か私のどちらかが家にいるようにしていました。夫婦共働きなので、調整がむずかしかったです。

片づけのプロが家づくりのプロに聞いてみた!コロナ禍で変わった家づくりのトレンドとは?【時間を生み出すヒト・モノ・コト】

真名子さん:
在宅勤務の日は、家中あちこちでエアコンをつけるのも気が引けるので、普段はリビングで仕事をして、本気モードのときやウェブ会議のときは個室に移動しています。でも……完全に個室にこもると集中はできても、それはそれで淋しいものなんですよ。

さいとう:
かといって、リビングだとうるさい……。わかります(笑)

真名子さん:
葛藤ですよね(笑)。だから、「室内窓いいな」「ゆるやかにつながる空間いいな」って、自分の経験を通して羨ましく思いながら、商品の企画開発に携わっています。

さいとう:
真名子さんは収納商品の企画開発を担当しておられるんですよね。開発者の憧れや理想が詰まった商品なら、納得感があります(笑)

■ ニーズ2: 家事や片づけを効率よくこなしたい!

さいとう:
2つめのニーズ、「家事や片づけを効率よく行いたい」についてはいかがでしょうか?実体験として、なにか変化を感じましたか?

真名子さん:
はい。コロナ禍だけが原因ではないのかもしれませんが、「家族のあり方」が変わってきていると感じます。

家でも仕事ができるようになって、家事に参加するハードルが下がりましたし、子どもと会話をする時間も増えました。自分のなかの「家族」が占める割合が大きくなって、みんなで協力し合いながら快適に過ごしたいという気持ちが、以前より強くなったと思います。

さいとう:
家族が家事や片づけに参加するためには、収納が大きなポイントになりますよね。でも、はじめから家に造り付けられている収納スペースって「ここにほしい」と思う場所になかったり、あったとしても奥行きが深すぎたり浅すぎたり……。みんなが使いやすい収納を組み立てるのは、意外とむずかしいのが現状です。

その点、リニューアルされたオーダーメイド収納「キュビオス」では、比較的手軽に、新たな収納スペースを造り付けられるだけでなく、市販の収納用品とモジュールが揃っているから、収納プランを考えやすそうなのがいいなと思いました。

片づけのプロが家づくりのプロに聞いてみた!コロナ禍で変わった家づくりのトレンドとは?【時間を生み出すヒト・モノ・コト】
(ショールーム撮影/手塚千聡)

真名子さん:
ありがとうございます。実は、職業柄、エンドユーザーさんのSNSや雑誌の片づけ収納特集をこまめにチェックしているんです。収納スペースに“もの”を入れるだけでなく、無印良品のファイルボックスニトリの「Nインボックス」IKEAの「VARIERA(ヴァリエラ)」などを上手に組み合わせて小分けにする収納が一般化していますよね。

そうした人気の収納用品を研究してみたら、大きく分けて2つの寸法体系があることに気づいたんです。1つがA4ファイルボックスサイズで、幅のバリエーションは10cmと15cm。もう1つがプラスチックコンテナサイズで、おおよそ幅38cm x 奥行26cm x 高さ24cmです。

片づけのプロが家づくりのプロに聞いてみた!コロナ禍で変わった家づくりのトレンドとは?【時間を生み出すヒト・モノ・コト】

真名子さん:
家を片づけようと思って収納用品を買ってきても、スペースにうまく収まらないとがっかりするじゃないですか。それならはじめから、市販のアイテムがぴったり収まる寸法モジュールを採用して、“がっかり”を防ぎたい。真のお役立ちがなんなのか、より深く考えながら、新しい「キュビオス」を開発しました。

さいとう:
上のショールームの写真で、編集チームの木村さんが扉を開けたところに、掃除道具がかかっていますよね。このワイヤーバスケットも「キュビオス」のオプションですか?

真名子さん:
そうなんです。無印良品のスプレーボトルカーペットクリーナーがぴったり収まるようにつくっています。

掃除道具って、形状が複雑で収納がむずかしいですよね。でも、リビングに置ければ、家族みんなが必要なときにさっと取り出して、掃除できるから便利。なんとかしてすっきり収められないかと思って、何回も試作を繰り返しました。

さいとう:
まさに“真のお役立ち”に届く設計ですね。リビング以外にも、家事や片づけの効率化が注目されている場所はありますか。

DX・新規事業推進部 田中美紀さん(以下、田中さん):
ランドリー空間を充実させたいというお声も多く上がっています。たとえば、洗面所に室内干しスペースを組み込んだり、アイロンがけコーナーをつくったり。収納を充実させてファミリークローゼットとして活用される方も増えています。

片づけのプロが家づくりのプロに聞いてみた!コロナ禍で変わった家づくりのトレンドとは?【時間を生み出すヒト・モノ・コト】

さいとう:
それは便利そうですね! 家族みんなが在宅しているなか、リビングに洗濯物を干していると落ち着かないので、このショールームのような家事室は羨ましいです。

片づけのプロが家づくりのプロに聞いてみた!コロナ禍で変わった家づくりのトレンドとは?【時間を生み出すヒト・モノ・コト】
(ショールーム撮影/手塚千聡)

真名子さん:
家族の在宅時間がズレていたことでこれまで気にならなかったことが、コロナ禍で在宅時間が重なって気になるようになっていますよね。部屋のあちこちにものをちょい置きしがちな人がいると、ちょい置きが許せない人は気になって仕方なかったり……。そんな違いがあっても、心地よく共存できるようにするのが、収納商品のひとつの役目だと思っています。

さいとう:
なるほど。収納商品は心地よい暮らしを実現するための手段でもあるということですね。「片づけは目的ではなく、快適に暮らすための手段のひとつ」というライフオーガナイズの考え方と通じるものがあります。

真名子さん:
そうですね。配置換え、入れ替えしやすい置き家具。細かなニーズに対応できる造作家具。造作家具ほどのカスタマイズ性はないものの、相対的に低価格で安定した品質を保ちつつ、希望の場所、サイズにぴったり合った収納を造りつけられるのが、「キュビオス」などのシステムファニチャー。どれがベストということではなく、自分達家族のニーズに合った収納を選べるといいのではないでしょうか。

■ ニーズ3: 家の中の居心地をもっとよくしたい!

さいとう:
3つめの「家の中で心地よい居場所をつくりたい」というニーズにも、深く共感してしまいます。一時期は外出もままなりませんでしたから……。

コロナ禍で住まいのリフォームが増えたという話を聞きますが、具体的にどういった施工が人気ですか。とくに売れた商品などありますか?

石原さん:
在宅時間が増えたことで、家の中の“アラ”が目につくようになったから、リフォームして素敵にしたいという方が増えましたね。なかでも人気を集めた商品は、リフォーム専用床材の「ウスイータ(USUI-TA)」です。

さいとう:
え? 床材が売れたんですか?

野村さん:
そうなんですよ。ご自宅の床の傷みが気になっている方は多いのですが、フローリングの貼り替えは通常、大掛かりなリフォームになるため、躊躇される方が多いです。けれども、この商品は床の上に貼るだけなので、短時間・低コストで施工できます。1週間かかっていた施工が、「ウスイータ」なら1、2日で終えられます。

片づけのプロが家づくりのプロに聞いてみた!コロナ禍で変わった家づくりのトレンドとは?【時間を生み出すヒト・モノ・コト】

野村さん:
床を剥がす作業がないためゴミが出ず、施工時に近隣に音が響かない点も、コロナ禍で人気が伸びた一因だと思います。在宅時間が増えたのは自分の家だけでなく、ご近所さんも同じ。工事による騒音のご迷惑を気にされる方に喜ばれています。

さいとう:
床の上にシートをのせるとなると、施工は簡単かもしれませんが、既存のドアや扉が開かなくなることってありませんか?

石原さん:
これまでの商品は薄くても5mm程度ありましたが、「ウスイータ」は1.5mmなんです。ドアや扉に干渉しづらい点もリフォーム向きだと思いますよ。

さいとう:
建材の進化は日進月歩ですね! コロナ禍で需要が伸びた背景をお聞きして納得しました。家の居心地をよくするためのリフォームとして、ほかにも人気のプランはありますか?

片づけのプロが家づくりのプロに聞いてみた!コロナ禍で変わった家づくりのトレンドとは?【時間を生み出すヒト・モノ・コト】
(ショールーム撮影/手塚千聡)

田中さん:
リビングにシステム家具を設置して収納スペースを広げるリフォームも人気です。これまで受動的にテレビを見るだけだった空間で、YouTubeを見ながらフィットネスしたり、オンラインで集まってゲームをしたり。テレビをデバイスにして繋がる機会が多くなったことで、体を動かすスペースや増えたものを収める場所が必要になっているのだと思います。

さいとう:
床面積は増やせないから、壁面を上方向に有効活用してリビングを広く使う作戦ですね。みなさん、よく考えておられますね!

■ 費用は?窓口は?自宅プチリフォームのギモン

さいとう:
わたしもこういったプチリフォームにとっても関心があるのですが、気になるのが価格です。たとえば、「予算100万円以内で、リビングの一角にワークスペースを設けたい」というのは現実的ですか?

野村さん:
物件にもよるので、あくまでも“目安”ですが……。もっとも手軽なのは、「しきり窓」を活用した下のようなプランだと思います。商品価格が約74万円なので、施工日数が1日で収まれば、予算内で実現できるのではないでしょうか。

片づけのプロが家づくりのプロに聞いてみた!コロナ禍で変わった家づくりのトレンドとは?【時間を生み出すヒト・モノ・コト】
「しりき窓 オフブラック色(透明体熱処理ガラス)」参考価格743,600円(税込)(画像提供/パナソニック ハウジングソリューションズ)

さいとう:
興味がある方は、まずどこに相談すればいいですか?

野村さん:
「ほしい商品が具体的に決まっている」という場合は、ショールームで実物を見て、その場で見積もりを依頼される方が多いですよ。パナソニックのショールームは全国63カ所にあります。

片づけのプロが家づくりのプロに聞いてみた!コロナ禍で変わった家づくりのトレンドとは?【時間を生み出すヒト・モノ・コト】
(ショールーム撮影/手塚千聡)

野村さん:
「こういう空間にしたいけど、何を選べばわからない」という場合は、住宅会社に相談してみるといいかもしれませんね。ホームページ上で、提携しているリフォームショップを紹介しているので、よろしければチェックしてみてください。

さいとう:
まだ妄想段階……という場合は、どこで情報収集すればいいでしょうか。

真名子さん:
快適な空間づくりのアイデアをまとめたプラン集「家をたのしむ88」が参考になると思います。

もう少し具体的にイメージしたい方は、ウェブ上でユニットやパーツを選ぶだけで3Dプラン図が作成できるプランニングサービス「アイハウズプラン」も便利です。

さいとう:
いろんなアプローチの仕方があるんですね。お話を伺って、コロナ禍で住まいに対するストレスが大きくなってしまった人や、スペースの新たな使い方を模索している人にとって、プチリフォームは有力な選択肢のひとつになると感じました。

真名子さん:
収納商品はあくまでも「そこに住む人の暮らしをもっと快適にするお手伝いをするもの」で、やっぱり人間が主役、生活が主役です。いくら便利だからといって、家具が目立ちすぎては役割として不十分。インテリアを素敵に保ちつつ、お客様ひとりひとりの生活に馴染んで、自然なかたちで使っていただけるのが理想だと考えています。

片づけのプロが家づくりのプロに聞いてみた!コロナ禍で変わった家づくりのトレンドとは?【時間を生み出すヒト・モノ・コト】

■ 編集後記:「ニューノーマル」を支えるプロ達

快適な住まいづくりは、3年先、5年先、10年先の暮らしを見据えながら、少しずつすすめていくものだと思います。ところが、それがコロナ禍で一転! 計画どおりに進まなくなって、わたし自身も途方に暮れることがありました。

けれども、ひとりぼっちで悩む必要はないんですね。片づけのプロだけでなく、家づくりのプロも、さまざまな解決策を考えてくれています。これまでの常識を一度リセットして、ときにはプロにアドバイスを求め、ときには選択の幅を広げながら、新しい生活様式に馴染む住まいを新たにつくっていきたいと思いました。

お話をお聞かせてくださった「パナソニック ハウジングソリューションズ株式会社」、建築システム事業部のみなさん、ありがとうございました!

【取材協力】
パナソニック ハウジングソリューションズ株式会社

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