みんなが暮らしやすい家、建てたあとに後悔しない家を提案したい〜ライフオーガナイザーインタビュー(和田さや子さん)

片づけのプロとして活躍するライフオーガナイザーたちは、どんなきっかけで資格を取得し、今に至っているのでしょうか?

大阪府在住のライフオーガナイザーで、片づけ収納ドットコムのライターでもある和田さや子さんにお話を伺いました。和田さんは一級建築士の資格もお持ちです。

みんなが暮らしやすい家、建てたあとに後悔しない家を提案したい〜ライフオーガナイザーインタビュー(和田さや子さん)

和田さや子(わだ さやこ)/ライフオーガナイザー・建築士
注文住宅専門の一級建築士。 夫と2人の子ども(小6+小2)と暮らす自宅を、省エネで家事ラクな家へ建替え。利き脳は右左、無垢の木とお気に入りの雑貨に囲まれて暮らしたい43歳。大阪府在住。

インタビュアー・記事・編集/会田麻実子
写真提供/和田さや子

−片づけはずっと得意だったのですか?

私はズボラなのですが、ものに執着がなく、捨てることも苦にならないタイプなので、片づけに困ったことはありません。以前は「片づけられない人は、ものを捨てれば片づくよね」なんて思っていたほどです。

夫は私と違って几帳面で、ものをたくさん持ちたいタイプです。夫のスターバックスのタンブラー収納について、片づけ収納ドットコムでもご紹介したことがありますが、たくさんのものを決められたスペースの中で管理できる上に、美しく収納する人なので、夫が散らかして困ったこともありません。

さすがに、子どものスペースはそれなりに散らかることがありますが、それも生活が困るほどではないですね。

スターバックスのタンブラーが100個以上! 家族みんなが納得して飾る方法

和田さんのご主人のタンブラー収納についての記事はこちらから:
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−もともと一級建築士だった和田さんが、ライフオーガナイザーという職業を知ったきっかけは?

一人目の子の育児休暇から復帰した頃に、当時勤めていた工務店の上司が「後輩がおもしろそうなことをやっているから」と勧めてくれて、設計部のメンバー数人とその方のオフィスに伺いました。

そのときに、利き脳(手に利き手があるように、脳にも利き脳があるという故・坂野登京都大学名誉教授の提唱する考え方)の話聞いて、興味を持ちました。

みんなが暮らしやすい家、建てたあとに後悔しない家を提案したい〜ライフオーガナイザーインタビュー(和田さや子さん)

−どんなところに興味を持ったのですか?

利き脳によって得意分野が違い、適した収納方法も違うという話は、どんなお客さまに対しても、提案の糸口になりそうだと思いました。

育児休暇から復帰して、周りから突然「これからは主婦目線での提案もできるね」と言われるようになって、戸惑っていた時期でもあったんです。20代は仕事一筋で生きてきて、家事もそこまでしていませんでした。

そんな人間が結婚して子どもを産んだからって、急に家事ができるようにはならないですよね。しかもお客さまは私よりも年上の方ばかりで、子育て経験も家事経験も私より豊富。だから、私からアドバイスできることなんて何一つないし、自分で経験を積むより習った方が早いかなと考えていました。それで、ライフオーガナイザーの勉強をすることを決めたんです。

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−ライフオーガナイザー2級認定講座を受講されてみて、何か発見はありましたか?

そうですね。特によく覚えているのは、講師の方がゴミ箱の扱い方がご主人と自分で違うから、こういう工夫をしたら、すごく良くなったという具体的で現実的な例で説明をしていたことです。「なるほどなあ、そんな風に考えたことがなかったな」と思った記憶があります。

私と夫とのことにも、気づきがありました。私、夫とは全然タイプが違うと思っていたんです。それこそ私はズボラで、夫は几帳面なので。でも、収納に関していうと割と近い感覚を持っているんだなと思いました。

同じケースが並んでいるとか、お気に入りの収納用品ができたらそれをひたすら使うとか、そういう「見た目が整っていたらテンションが上がる」というところはすごく似ていて。だから、一緒に生活していてもそんなにぶつからないんだなと気づきました。

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−建築の知識にライフオーガナイズの知識が加わったことで、変わったことはありますか?

お客さまの価値観に寄り添った収納の提案を心がけるようになりました。「心から大切にしたいこと」と、「ちょっとした憧れみたいなもの」を交通整理して、「家づくりでいちばん大切にしたいこと」を見つけるお手伝いをする、そんな新しいスキルを手に入れたように思います。おかげで、お客さまへの提案の幅が広がりました。

家づくりのためにお客さまと打ち合わせをしていると、ご夫婦の価値観の違いや日頃の不満がそこで一気に露わになって、ときには言い合いになってしまうこともあるんです。そういうときに、どちらの肩を持つでもなく中立の立場で、「家族でも片づけやすさに違いがある」とか「どちらが悪いわけでもない」と伝えつつ、解決策を提案する調整役になることができるようになりました。

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−ライフオーガナイザーになって、ご自身の暮らしに変化はありましたか?

ライフオーガナイズを学んだおかげで、言葉にできるようになったことが、たくさんある気がします。

たとえば、私はやりたいことや人生の目標が常にあるほうで、昔からやりたいことを最優先に、他のことをどう終わらせるかという意識で行動してきました。ライブに行きたいってなったら、まずはチケットをとってしまって、ライブに行くために必死で仕事を調整するみたいな感じです。

自分のやりたいことのためなら、そこの照準を合わせて行動するのは得意なのですが、それをずっと「やりたいことをやっているだけですから」で済ませていたんです。

価値観とか優先順位という言葉を得たことで、意識せずにやっているせいで、うまく説明できなかったことを噛み砕いて他の人に説明できるようになりました。

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−時間を生み出すためにしている、片づけ・収納の工夫はありますか?

「見えないものはないのと一緒」なので、必要なものは見えるように出しっぱなしにしています。でも、生活感が出過ぎるのは嫌なので、インテリアに合ったものを買うように気をつけています。

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−現在の仕事と今後の活動予定を教えてください。

片づけ収納に関するセミナーを開催したり、いくつかのウェブメディアでライターとして記事を書いています。片づけのサポートもしていますが、ご紹介が中心です。

大きな変化としては、昨年独立して設計事務所をたちあげました。一軒目の家が今建築中で、春には完成見学会ができる予定です。写真などは、ホームページやSNSなどでもご紹介したいと思っています。

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−お仕事を通じて、周囲の方やお客さまに「こんなことを伝えたい」ということは何ですか?

ライフオーガナイザーとしては、住む人みんなが暮らしやすい家、建てたあとに後悔しない家を提案したいという思いが強くあります。

設計士としては、少し大きな話になりますが、社会に対していい家を作りたいです。それは、CO2排出量の少ない家を建てたいという、サステナブル目線の思いでもあります。

また「家が街をつくる」という考え方があるのですが、やっぱり量産型の家ばかりが並んでいると、日本の街を衰退させてしまう気がしています。「この街いいな」と住んでいる人が感じる街であってほしいです。街に対していい家というのは、家そのもののデザインもそうですし、街と家をつなぐ庭についてもこだわりがあります。

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−3年前に新築されたご自宅も、そういったことを意識されたのでしょうか?

そうですね。うちの場合は、一番大事にしたのは省エネであること。過度な冷暖房を使わなくても、家の中を快適に保てるようにしました。

庭は「季節ごとにいろんな花が咲くようにしてほしい」と造園業者さんにお願いしました。春は桜が咲きますし、秋は紅葉が色づき、金木犀も咲きます。それを見て子どもたちが喜ぶ姿を見たり、ご近所の方に「楽しみにしているんだよ」などと言ってもらうと、「ああ良かったな」と思います。

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>>>連載企画:【実録】家づくり&片づけのプロが自宅を建てる

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−最後に、これから家づくりをされる方へアドバイスをお願いします。

まず、ご自身やご家族の価値観に向き合って「本当に大切にしたいこと」「お金をかけるべきこと」を整理することが重要です。ご自身でしてもいいですが、ライフオーガナイザーに相談するのもいいと思います。

打ち合わせのときは、設計士とたくさんコミュニケーションをとって、やりたいことや苦手なこと、素直な疑問などを率直に伝えることが、理想の家づくりにつながります。

【実録】家づくり&片づけのプロが自宅を建てる ~家電購入編

友人にアドバイスするとしたら「素直に、仲良くなろうって気持ちで、コミュニケーションをとるといいと思うよ」と伝えると思います。

プロであるとはいえ、設計士もやはり人なので、「このお客さまのために、もっといい家にしたい」と思ってもらえる関係を作れるといいのかなと思います。

【編集後記】
大学でサステナブルデザインを学び、勉強するのが楽しすぎて大学院まで進んだという和田さん。さらに学外で、国産材で家を建てることに取り組む企業や団体が集まる勉強会に参加していた勉強家です。社会人になってからは、注文住宅専門の設計士として、たくさんの木の家づくりに携わってきたプロ中のプロ。

そんな和田さんが昨年独立し、現在建築中という一軒目の家……、どんな家なのかとっても気になりますよね? 片づけ収納ドットコムでも、ぜひ紹介してほしいとお願いしました。お楽しみに!

和田さんが、これまでの記事で特に記憶に残っているという記事:
一般的な押入れとココが違う!「布団専用収納のカタチ」
「たくさんの方に読んでいただいた記事です。大学院を卒業して、新卒で入った会社の上司がこういうプランをする人だったので、布団収納といえば、”これ”という感覚でいました。たくさんの反響をいただいて、ああこういうことを伝えればいいのかと気づくきっかけになりました」。

一般的な押入れとココが違う!「布団専用収納のカタチ」

ライフオーガナイザー 和田さや子
HP:NIGI一級建築士事務所

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