片づけのプロとして活躍するライフオーガナイザーたちは、どんなきっかけで「片づけ」に目覚め、資格を取得し、今に至っているのでしょうか?
沖縄県在住のインテリアコーディネーターで、片づけ収納ドットコムのライターでもあるライフオーガナイザー東風平美穂さんにお話を伺いました。
東風平美穂(こちんだ みほ)/ライフオーガナイザー、インテリアコーディネーター
夫と小6の息子、6歳の娘とマンション暮らし。めんどくさがりの性格はそのままに、仕組み化をすることで暮らしを楽に豊かにすることを日々研究する48歳。
インタビュアー・記事・編集/会田麻実子
写真提供/東風平美穂
■汚部屋暮らしだった独身時代とライフオーガナイズとの出会い
―東風平さんは、もともと片づけは得意だったのですか?
実は、子どもの頃から全然片づけられませんでした。洋服はガサッと重なっている中から取り出すような状態で、いわゆる“汚部屋”だったと思います。
ものをなくしたり、必要な服が見つけられなくなると一気に片づけて、でも、片づいた状態を維持できなくてまた散らかす……という感じでした。インテリアは好きで、キレイにしたい気持ちもあったのですが、結婚して沖縄に嫁ぐまでずっとそうでした。
―結婚後、暮らしに変化はありましたか?
はい。結婚して自分で持ち物を選んで、何をどこに置けば便利なのか自分で考えるようになって、人並みに片づけられるようになりました。実家にいたときはすべて母まかせだったのが、汚部屋の原因のひとつだったなと今となっては思います。
―そこから、片づけられるようになったわけですね。
それが長男を出産後に、また片づけられなくなってしまったんです。インテリアコーディネーターの資格を取得した時期だったこともあって、「片づけもできないのに、インテリアコーディネートなんてできるんだろうか」「片づけが先なのでは?」と考えるようになりました。ライフオーガナイズに出会ったのは、その頃です。
―ライフオーガナイズには、どのようにして出会ったのですか?
インテリアについて調べていたときに、たまたまライフオーガナイザーの鈴木尚子さんのブログを読んで、知りました。
「片づけの資格なのに、時間や思考が関わるなんて」と衝撃を受けましたが、一方で「私が求めていたのはこれだ!!」とも思ったんです。当時、沖縄でのセミナーはなかったので、福岡まで行って2級認定講座を受講しました。
―ライフオーガナイズを学んで、変化はありましたか?
ありました。「片づけはきちんときれいに並べて、揃えるもの」「片づけられないのは自分が悪い」と思っていたけれど、そんなふうに考える必要がないとわかって気持ちがラクになりました。
そこから自分にあったやり方や仕組みを探しながら、暮らしを整え始めたら、暮らしやすくなって家事もどんどんスムーズにできるようになったんです。たとえば洗濯物ひとつとっても、洗う、干す、取り込む、畳む、しまうという一連の流れが、滞ることがなくなりました。
■伝える楽しさを知り、ライフオーガナイザーの道へ
―最初から、プロになることを目指していたのですか?
初めは「自分の家がきれいになればいいな」くらいの気持ちだったんです。1級(プロとして活動するための資格)を取得して沖縄初のライフオーガナイザーになったあとも、仕事にしようという気持ちはありませんでした。
ただ、1級受講中に講師の方から勧められて始めた、ブログでの情報発信だけは続けていました。
―現在はライフオーガナイザーとして活躍されていますが、気持ちが変わったのには何かきっかけがあったのですか?
ライフオーガナイザーになって1年ほどたった頃に、ブログを見た沖縄の高校の先生から「生徒たちにライフオーガナイズを伝えたいので、私(先生)に教えてほしい」とご相談いただいたのがきっかけです。
どうしたらいいか分からなくて(日本ライフオーガナイザー協会の)事務局に相談したら、「東風平さんが直接、高校生に教えてみては」と言われました。
―それで、セミナーを開催したわけですね。
そうですね。「ああ、そうなるか〜」と思いましたが(笑)、まずは、先生にお会いしてお話を伺ったんです。すると同じ大学の同窓生だったり、子どもが同い年だったりと共通点がたくさん見つかって、「これは引き受けるしかないな」と覚悟を決めました。
結局、40名くらいの高校生と10名の先生に、出前授業という形で初めてライフオーガナイズのセミナーをしました。
―初セミナーで50人!? それはかなり大変だったのでは?
初めてのセミナー、初めてのスライド作成と初めてづくしで不安もありましたが、ご依頼くださった先生とやりとりしながら内容を考えるのは、とても楽しかったです。
―初セミナーの感想はいかがでしたか?
「初めてでこれをやったなら、あとはなんでもできるな」と思いましたし、高校生にも先生にもすごく喜んでもらえて「こんなに喜んでくれるんだったら、ライフオーガナイズをもっと広めてたくさんの人に知ってほしいな」と考えるようになりました。
―大きな人生の転機になったんですね。
はい。私は目標を立てて行動を起こすのがあまり得意ではなくて、頼まれたことに応えるうちに人生が動くタイプです。だから、この出会いがなかったら、今、ライフオーガナイザーとして仕事をしていないだろうと思います。
■「自分を責める必要はない」と伝えたい
―現在ライフオーガナイザーとして、どのような仕事をしていますか?
お客さまのご自宅に伺う「片づけサポート」を中心に、家具選びのお手伝いなどもしています。インテリアメーカーが主催するイベントなどで、片づけセミナーの講師をすることもあります。ここ最近だと、教育委員会のプロジェクトにも関わりました。
―今後は、どんな活動をしていきたいですか?
私自身も片づけられなかったので、「片づけられないのは自分のせいじゃなくて、やり方や環境があっていないせい。自分を責める必要はない」ということを、さまざま形で伝えていきたいですね。
そして、ライフオーガナイズをもっと沖縄に広めて、仲間を増やしたいんです! そのために……、マスターライフオーガナイザー(認定講師)の資格を取得したいなと実は思っています。将来的には沖縄で、定期的に2級認定講座を開催できたら嬉しいです。
―ライフオーガナイズを広めたいと考えているのは、ご自身の暮らしが変わったからでしょうか?
そうですね、片づけられなかった私が片づけられるようになったというのもありますが、私自身がライフオーガナイザー同士のつながりができたことをすごく「良かったな」と思っているんです。
ライフオーガナイザーって、なんていうんでしょう。いい人が多いですよね? 受け入れる幅が大きいというか……。
―懐が深くて、多様性を大切にしている人が多いですよね。
あ! そうそう、そういう感じです。いろんなタイプの人を受け入れてくれる人が多くて、とても居心地がいいんです。(日本ライフオーガナイザー)協会も、私のように細々としか活動できていない人にも、さまざまなバックアップをしてくれますし、引っ張り上げてチャンスも与えてくれて、感謝の気持ちでいっぱいです。
だから「ライフオーガナイザーになって、いいことばっかりだよー」ということも、ぜひ伝えたいなと思っています。
―最後に、暮らしに悩みを抱える方へメッセージをお願いします。
片づけについてでも他のことでもそうなのですが、「一人で悩まずに、まずは誰かに相談してみてほしい」とお伝えしたいです。相談するのはその分野のプロだけではなくて、友だちでも構いません。誰かに「こういうことができない」「こういうことで困っている」と話すと自分とは違う視点が入ってきて、新しい発見や解決策が見つかると思うんです。
実は私も、ずっと壁紙の張り替えのことで悩んでいて、先日、インテリアコーディネーター仲間に相談したんです。そうしたら「一緒にやろうよ」と言ってくれて。「ああ、こんなに簡単に解決するものなんだなあ」と思ったばかりなんですよ。
【編集後記】
「沖縄は独自の風習や季節ごとのイベントが多い印象がありますが、慣れるまでは大変だったのでは?」という質問に、「ピクニックみたいなお墓参りも旧暦も、外国みたいだなと思いました。違いが大きすぎて、かえって慣れるのはラクでしたよ」と語ってくれた東風平さん。東風平さんご自身こそ、さまざまな違いをゆったりと受け入れられる「懐の深い人」なのだなと感じました。
今後のライフオーガナイザーとしてのご活躍や、片づけ収納ドットコムのライターとしての情報発信がさらに楽しみです!
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ライフオーガナイザー 東風平美穂(こちんだみほ)
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