ネガティブ歴30年!だからこそ伝えられる、ものと気持ちの片づけ方〜ライフオーガナイザーインタビュー(都築クレアさん)

片づけのプロとして活躍するライフオーガナイザー達は、どんなきっかけで「片づけ」に目覚め、資格を取得し、今に至っているのでしょうか?

神奈川県在住のライフオーガナイザーで、片づけ収納ドットコムのライターでもある都築クレアさんにお話を伺いました。

インタビュアー/さいとう きい、会田麻実子
写真提供/都築クレア
記事・編集/さいとう きい

■ 「梅田で号泣」事件で噴出した、家族に対する不満

編集チーム・さいとうきい(以下、編集・さいとう) 都築さんは、どのようなきっかけでライフオーガナイザーの存在を知りましたか?

都築クレアさん(以下、敬称略) 子どもが産まれて半年くらいたった頃、当時住んでいた大阪のターミナル駅「梅田」のど真ん中で、夫と大喧嘩したのがきっかけだと思います(笑)

編集・さいとう おぉぉぉ、大変な事件がきっかけですね。喧嘩の理由は、よっぽどのことだったんですか??

都築 実は、喧嘩をしたことは鮮明に覚えているのに、理由はまったく覚えていないんですよ。小さな我慢が積もりに積もって、たまたまそこで爆発したんだと思います。そのまま夫と喧嘩別れして、私はひとり、ベビーカーを押しながら、人混みの中で泣き崩れました。周りの人はびっくりしたでしょうね(笑)

家族の仕事の都合で、短期間に3回の引っ越しを経験。こちらは旧居のリビングの様子

都築 「このままの夫婦関係ではいけない!」と、喧嘩別れしたその足で本屋に駆け込み、自己啓発本を手に取りました。そこに「自分の価値観を大切にしましょう」と書かれていたんです。

家に帰って「自分の価値観」について色々と検索していたら、ライフオーガナイザーのブログにたどり着きました。家を片づけているうちに気持ちまで片づき、精神的にも変わったと書かれていたのが、心に響きました。それが「ライフオーガナイザー」との最初の出会いだったと思います。

編集チーム・会田麻実子(以下、編集・会田) 「変わりたい」という気持ちがあったんですね。

都築 はい。私はもともと人づきあいが苦手なタイプで、さまざまなことに対してネガティブな感情を抱きやすい性格です。

でも、「この人とはうまくいく」と信じて結婚した夫とさえもギクシャクしてしまったのは、正直ショックでした。喧嘩をして、「私はこんなに我慢してるのに!」と相手を責めながら、自分にも問題があると気づいていたんです。この大喧嘩で、「このままじゃだめだ!変わりたい!」と強く思うようになりました。

編集・さいとう お住まいのことでも悩みはありましたか?

都築 ありました。夫とのことだけでなく、家のことも、育児のことも、仕事のことも、当時は何もかもうまくいかないと感じていました。

私は家の状態が心の状態に強く影響するタイプなので、ひとり暮らしをしていた頃は持ちものを厳選し、なるべく数を減らして、すっきり暮らせるようにしていました。インテリア誌を見るのが大好きで、素敵な暮らしへの憧れも強いほうです。でも、夫は思いつきで自由に買い物してくるし、家にたくさんものがあっても気にならない性格で……。

旧居のダイニングの様子

都築 結婚してふたり暮らしを始めると、自分ひとりで住まいをコントロールすることはできませんよね。自分さえ我慢すればいいと夫に合わせていたら、気づいたときには私の手に負えないほどものが増えてしまっていたんです。

家中のいたるところにものを詰め込んでいたから、子どもがつかまり立ちを始めてあちこち手が届くようになった頃には「そこは開けちゃダメ!」「ここは触わっちゃダメ!」と、「ダメ」ばかりで自己嫌悪に陥りました。夫との結婚を機に勤めていた会社を辞めて「やりたいことをしよう!」と独立したのですが、その仕事も順調ではありませんでした。

編集・会田 そういうストレスが溜まっていたことが、梅田での大喧嘩を引き起こしたんですね……。その後、すぐにライフオーガナイザーの講座を受講されたのですか?

都築 はい。ライフオーガナイザー2級講座を受講して、家を片づけるのにも「自分の価値観」が明確でないと、うまくいかないということを学びました。自分が求めていたこととライフオーガナイズで大切にしていることがぴったりと一致して、「この素晴らしさを伝えられる人になりたい!」と思い、その後すぐ1級認定講座も受講しました。

編集・さいとう ライフオーガナイズを学んで、ご自身の暮らしは変わりましたか?

都築 変わりました。「自分だけ」「夫だけ」ではなく、「ふたり」の価値観をすり合わせながら片づけを進められるようになり、少しずつ暮らしが整っていきました。

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都築 子どもの一時預かりサービスを利用できるようになったのも、私にとっては大きな変化だったと思います。ライフオーガナイズを学ぶ前は「会社に勤めているわけでもないのに」と、利用するのをためらっていたので……。

でも、講座で「ひとりで何もかも抱えなくていい」というメッセージを受け取り、思いきって子どもを数時間、預けてみたら、気持ちがすごくラクになったんです。私はひとりの時間を持つことで気持ちが整い、穏やかな気持ちで子育てできるタイプだとわかり、子育てで誰かに頼ることに罪悪感を抱きにくくなりました。

■ なぜネガティブなの? 過去の自分の「蓋」を開ける

編集・さいとう 住まいが整い、ご自身の時間も持てるようになり、ライフオーガナイザーとしてのお仕事はうまく進みましたか?

都築 それが……うまくいきませんでした。資格をとって、何度かお客様宅での片づけサポートに入らせていただいたのですが、そこで思い出したんです。自分がもともと人づきあいが苦手なタイプだということを(笑)。片づけや収納のアイデアも、その場でぱっと思いついて臨機応変に対応できる性質ではないため、現場での仕事は向いていないと感じました。

あらためて、自分はなにがしたいのか、できることはなんなのか、考えるほどわからなくなってしまって……。そんなとき、日本ライフオーガナイザー協会の高原代表理事に「メンタルオーガナイズ」を学んでみたらどうかとアドバイスをいただき、挑戦してみたんです。

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編集・会田 メンタルオーガナイザーのプログラムは、「願望(動機付け)、感情(行動の学習)、認知(見方や意味付け)の3つの観点から、思考(頭)と精神(心)のオーガナイズができる個人を育成し、また他者の心の整え方を支援できるスキルを身につけること」を目的としています。

編集・さいとう 会田さんもメンタルオーガナイザーでしたね。

編集・会田 実はそうです(笑)。メンタルオーガナイザーの講座には、自分自身の心を整理するための「セルフメンタルオーガナイズ講座」と、自分以外の人のサポートをするためのスキルを学ぶ「メンタルオーガナイザー資格認定講座」の2つのプログラムが用意されています。そのとき、都築さんが受講されたのは「セルフメンタルオーガナイズ講座」のほうですね?

都築 その通りです。講座はまさに“目から鱗”の連続でした。自分の過去の気持ちに向き合う勇気を持てたのも、メンタルオーガナイズのおかげです。

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編集・さいとう 自分の過去の気持ちとは、どういうものですか?

都築 実は私は小学生の頃に、いじめを受けた経験があるんです。それ自体はほどなく解決したのですが、そのとき以来すっかり自分を責める癖がついてしまいました。

当時はその状況から抜け出したい、解決したい一心で、「あのとき自分が●●と言ったのが良くなかったんじゃないか?」「あんな風に言われたのは、自分の●●な態度が悪かったんじゃないか?」と、学校からの帰り道に一人で反省会をしていたんです。悲しい気持ちには「蓋」をして、なんとか前向きに解決しようと、これまでなんとかやってきました。

でも、なにか悪い出来事に遭ったり、気持ちが塞いだりすると、その「蓋」を開けにいってしまうんです。「やっぱり自分は言葉や態度がダメなんだ。あのときもそうだった」……と、悲観的に振り返り、自分にダメ出ししてしまうことがよくありました。

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都築 メンタルオーガナイズの学びを通して知ったのですが、世の中には、過去に起こった出来事を振り返るときの「説明スタイル」が悲観的な人と楽観的な人がいるそうです。その出来事の原因が内的か外的か、一時的か永続的か、限定的か普遍的かという3つの思考パターンによって、悲観的なスタイルと楽観的なスタイルに分かれます。

私の場合、典型的な悲観的スタイルで、悪いことは「私が原因(内的)」「ずっと続く(永続的)」「ほかの場面でもまた起こる(普遍的)」と考えてしまう傾向があったんです。

編集・会田 客観的に自分を分析するスキルを学んで、考え方のクセがわかったんですね。

都築 その通りです。また、自分の気持ちに「蓋」をして、整理せずに今まできてしまったせいで、過去の体験からいつまでも離れられなかったんだということもわかりました。メンタルオーガナイズの講座を受けて、過去の自分の気持ちをすべて取り出し、30年ぶりに向き合いました。当時の自分をありのまま受け止め、共感したら、30年越しの気持ちが自然と整理され、昇華できたんです。

私に必要だったのは「自分を変えようとすること」ではなく、ありのままの自分に還って、本来の「自分らしさを取り戻すこと」だったんだと気づきました。

■ 「こんな私」だから、お客様に役に立てることは…

編集・さいとう メンタルオーガナイズの知識を得たことで、仕事に対する考え方は変わりましか。

都築 大きく変わりました。他人だけでなく自分自身とのコミュニケーションの取り方についても学んだことで、「ネガティブ歴30年の私」だからこそ、私のような苦しみを持つ人の気持ちを理解し、ネガティブ癖を整理するサポートができるかもしれないと考えるようになりました。

編集・会田 その気持ちが、現在の活動に繋がっているとお聞きしています。どのような内容ですか?

都築 現在は、実体験をベースにして組み立てたオリジナル講座の開催をメインに活動にしています。

壮絶な夫婦喧嘩を経て(笑)ようやく想いが伝わった夫との家事シェア体験をベースにした「私から変わる!はじめての家事シェア講座」や、伝え方を変えることで価値観がまったく違う夫といい関係を築けるようになった体験をベースにした「心と心が繋がる伝え方講座」、自分自身を整えて、幸せを感じられる心に戻るまでに大切だった体験をベースにした、「rebirth 自分らしさ再生プロジェクト」です。

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都築 「夢を叶える」「幸せになる」「大切な人といい関係を築く」……すべての基盤になっているのは、自分が自分を「良し」と思えているかどうかです。自分らしくありたいと思いながら、自分を否定して、他の誰かみたいになろうとしていたら、どこにも行けません。だから、講座では「自分らしさを取り戻すこと」を一番大切に考えています。

そして最近、「自分の気持ちとの付き合い方を、気軽に体感できる場所をつくりたい」と思って、心の“もやもや”を言葉にして書き出すことでさっぱりと洗い流す「心を洗う対話会」をスタートしました。受講してくださる方が自分らしく夢を叶え、幸せになり、大切な人と繋がることができるよう、お役に立てることが一つでもあればいいなと考えています。

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編集・さいとう 最後に、片づけ・収納、家族との関係に悩んでいる方へのメッセージをお願いします。

都築 私たちが子どもの頃は、家庭や学校で「片づけ」や「自分を整えること」「コミュニケーション」を学ぶ機会はほとんどありませんでした。だから、どうやってものを片づければいいのかわからない人や、どうやって自分の気持ちを整理すればいいのか、相手にどう伝えればいいのかを知らない人は、きっと大勢います。でも、私自身もそうだったように、それは「大切なものを大切にしたい」「大切な人を大切にしたい」という気持ちがないこととは違うんです。

だから、「知らない」というだけで自分や家族を責めるのではなく、“方法”と出会ってほしい。方法を学べば、何歳になってからでも人は変われるということを、心からお伝えしたいです。

ライフオーガナイザー 都築クレア
ブログ:“心を洗う”ー自分らしさとこの世界の幸せな関係

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