家族が自律的に“暮らし”に参加できるしかけをつくりたい ライフオーガナイザーインタビュー(手塚千聡さん)


片づけのプロとして活躍するライフオーガナイザーたちは、どんなきっかけで「片づけ」に目覚め、資格を取得し、今に至っているのでしょうか?

大阪府在住のライフオーガナイザーで、片づけ収納ドットコムのライターでもある手塚千聡さんにお話を伺いました。


手塚千聡(てづか ちさと)/ライフオーガナイザー
夫婦、小4息子、小2娘と67平米のマンション暮らし。利き脳は右右。収納や時間のセオリーを見つけ出すために、実験する毎日がお気に入り。韓流ドラマにドはまり中の46歳。大阪府在住。

インタビュアー・記事・編集/会田麻実子
写真提供/手塚千聡

■片づけも収納もインテリアも好き。なのに…と悩んだ日々

−手塚さんは、もともと片づけや収納がお好きだったんですよね。
はい。片づけや収納、インテリアのことを考えるのは、昔から好きでした。でも、いつでもきれいにしてるっていうわけでもなかったんです。仕事が激務だったこともあって、なかなか時間をとることができなくて。だから、社会人になってからは、休日に片づけや模様替えをするのが楽しみでした。

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−ライフオーガナイズには、どのようにして出会ったのですか?
ライフオーガナイズのことは、2015年に雑誌「天然生活別冊・暮らしのまんなか」に載っていた、ライフオーガナイザーの橋本裕子さんの記事を読んで知りました。

当時は、仕事に家事、子育てにとてんてこまいで、家じゅうが「しっちゃかめっちゃか」だったんです。しかも1年ほどの仮住まいだったので、使用頻度が低いものはダンボールに入れたまま山積みのままでした。「使いやすいように工夫はしているし、片づけも嫌いじゃない。なのに落ち着かない」とストレスを感じていました。

そんな中で、すべてのものに「そこに置いている理由」がある橋本さんの家を見て、「そういう状態っていいな、うらやましいな」と思いました。それでライフオーガナイザーというものに興味が出て、すぐにライフオーガナイザー2級認定講座を受けに行きました。

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■「仕事になるはずない」と思っていた片づけを、「私の道」に

−受講してみていかがでしたか?
すごくおもしろかったです。特におもしろかったのが、「もの」ありきではなくて、使う「人」ありきの片づけであること。正解はないという自由な感じもいいなと思いました。もっと学びたいと思って、すぐライフオーガナイザー1級認定講座(プロとして仕事をするための講座)を申込みました。

でも、当時は会社員だったので、仕事にしたいと思ってはいなかったんです。実をいうと、最初は「仕事になるわけない」「成り立つわけがない」と思っていたんですよね(笑)。

−それは衝撃発言!でも、今はライフオーガナイザーを仕事にしているわけですよね。
そうなんです。1級認定講座で、図面を書いたり、片づけサポートの課題が出たり、ブログでの情報発信の仕方を学んだり、仕事にするために必要なことを学ぶうちに「せっかく知っているのに、何もしないのはもったいないのかもしれない」と考え始めました。

それで、ブログを通じて情報発信をし始めたんです。すると、ほどなくして雑誌の取材依頼が来ました。そうなると、掲載されることをブログで紹介したいし、せっかくだから相談会をしてみようかなと。

そうこうするうちに知人や友人から頼まれて、片づけサポートも少しずつするようになりました。

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−広告代理店にお勤めだったと伺いました。仕事との二足のわらじは大変だったのでは?
朝、電車でブログを書いたり、お昼休みに収納の本を読んだり、問い合わせに対応したり、我ながら時間を駆使していたと思います。

ただ、時間的には大変でしたが、多忙ななかでオーガナイズの実践ができた貴重な4年間でした。自宅もオフィスも時間も、オーガナイズされるにつれ、どんどんやりたいことがラクにできるようになった実感を持てました。

−暮らし周りの雑誌や本もお好きだったんですよね。
そうですね。そこで紹介されている世界に憧れている読者の一人でした。

そんな私が大好きな雑誌や書籍の編集者さんに話を聞いてもらえて、普通にやっている工夫をおもしろいと言ってもらえて、さらに記事になって。それがすごく自信になって、「ライフオーガナイズを私の道にしよう」と考えるようになりました。

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−それで勤めていた会社を辞めることにしたのですか?
いえ、会社を辞めるつもりはなかったんです。兼業ライフオーガナイザーとして活動するつもりでした。

会社を辞めたのは、夫が仕事の都合でカナダに1年間行くことになったのがきっかけです。「どうせなら家族みんなで行きたいな」と夫婦で話し合いました。残念ながら、新型コロナウィルスの流行で行けないまま今に至ります。しかも夫の仕事の予定も変わってしまって。子どもも大きくなってきたし、「もう夏休みにどこか海外旅行に行けばいいか……」なんて話しているような状況です。

でも仕事を辞めたおかげで、兼業ライフオーガナイザーでは難しかった、お客さま宅に伺っての片づけサポートをできる時間が増えたので、結果としては良かったのかなと思っています。

■ライフオーガナイズを学んで変わった片づけとの向き合い方

−ライフオーガナイズを学んで、暮らしに変化はありましたか?
ありました。ライフオーガナイズを学ぶ前は、私が「いい」と思う通りにしていました。見た目重視&思いつきで家具や収納の配置をしていて、ひとりよがりだった気がします。

それが「子どもが自分でできるように」とか「夫に協力してもらえるように」と、視点が大きく変わりました。見た目どうこうよりも、家族の使いやすさや効率性を大事にするようにもなりました。

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−ご家族からの反応はどうでしたか?
ライフオーガナイザーになりたての頃は、すごく迷惑だったみたいです(笑)。

−え、そうなんですか?
そうなんです。「これが私の道だ」と思うようになって、いろんな仕組みを試したくて、あちこちの収納をどんどん変えてしまったんです。夫から「一度変えたら1カ月は変えないで」と言われたりもしました。そういう意味では、まだひとりよがりなままだったのかもしれないです。

でも、少しずつ家族にも「いいね」と言われる仕組みができ、定着していきました。以前片づけ収納ドットコムでご紹介した、パン作りの仕組みや病院ポーチもそうですね。

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−パン作りや病院ポーチの記事でも感じますが、手塚さんのご主人は家事や育児に積極的に取り組まれていますよね。
以前から“気持ち”は協力的でした。子どもたちの急なお迎え対応や平日の予防接種なんて夫の方が行ってくれたほどです。ただ、いわゆる「名もなき家事」には疎かったんです。だから私からすると、ほとんどの家事は私の指示待ちで「言わないとやってくれない」と、いつも不満を抱えていました。さらにいちいちお願いするのも面倒で、自分で抱え込むという悪循環に陥っていました。

ある朝そんな状況にすっかり疲れてしまって、「全部したい気持ちはあるけどできないから、毎日朝ごはんを作ってほしい」と夫に申し出たんです。そうしたら、「いいよ」とあっさり。そこから夫婦での家事と育児のシェアが進むようになりました。

−ご主人は家事や育児をシェアすることについて、何かおっしゃっていますか?
育児や家事にお父さんを巻き込むというと、自分(お母さん)のためと捉えられがちです。でも、実はお父さんにとっても、親としての楽しみや幸せを感じる機会が増えるようです。

夫は「子育てにもたくさん関わってきて良かった」と、折に触れて言います。保育園の送迎も夫が担当してくれていたのですが、最後の日の様子をビデオで撮影しました。思い入れがあったみたいです。

子どもたちのお父さんへの信頼感も厚いです。やっぱりそれは夫をどんどん巻き込んだからかなと。ライフオーガナイズは、夫が“暮らし”に自律的に参加するための手段だったと思います。

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■気軽に外注できるような、新しい仕組みを考えていきたい

−現在はライフオーガナイザーとして、どんな仕事をされていますか?
個人宅にお伺いする片づけサポートが中心です。先日は引っ越し前のものの整理から新居の収納プランニング、引っ越し後の荷物の開梱収納作業も行いました。オンラインの片づけサポートにも取り組んでいます。

他にもご近所さんに頼まれてセミナーをしたり、ライターとして記事も書いていますが、一番好きなのは、実際にお悩みを解決できる片づけサポートですね。

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−最後に、暮らしに悩みを抱える方へのメッセージをお願いします。
「もし片づけが好きじゃないなら無理しないで」と伝えたいです。片づいていないのは嫌だけど、実は「片づけなんてやらなくてすむんだったらラッキー」と思われる方は、片づけのプロへの外注も検討してほしいなと思います。

以前片づけが好きじゃないとおっしゃるお客さまに、「こんなことをやってもらって申し訳ない」って言われたことがあるんです。でも私は体力的には疲れても、実はすごく楽しかったので、むしろ頼ってくださって嬉しいし感謝の気持ちでいっぱい。それを伝えると心底びっくりされていました。それくらい人って違うから、苦手なことは得意な人にもっと頼っていいんですよね。

私も「嫌いじゃないけど、やらないで済むならラッキー」と感じていた掃除を、ルンバと家事代行サービスとでやらずに済むようチャレンジ中です。気が進まないことは外注して、その分その時間で困っているお客さまのおうちを片づけにいきたいです!

とはいえ、誰かに頼むハードルの高さもわかります。だから、「片づけが嫌い」「やりたくない」という方が気軽に外注できるような、新しい仕組みを見つけたいと考えているところです。

【編集後記】
友人や知人、ご近所さんからのクチコミでの仕事依頼が多いという手塚さん。身近な人に頼られるのは、手塚さんの人柄あってこそ! 今後のご活躍がますます楽しみです。

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「この記事で紹介した “家事カード”のおかげで、自分のイライラを客観的に見ることができ、夫にいちいち頼まなくてもよくなり、夫からも意見をもらえました。夫との家事シェアを加速してくれたツールで、印象に残っています」。

ライフオーガナイザー 手塚千聡(てづか ちさと)
ブログ : 不機嫌にならない暮らし


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